絶対安全

 

前編
 
此処にあるモノ全てに依存して生きていく
それが全て
 
 
 
「−…明日、この街を出よう。」
 
 
銀色の、長い髪の男が呟く。
 
「…いきなりだな。」
その言葉を向けられた金色の、髪の短い男が短く答える。
 
「そうでもないよ。僕らは元々ツバメなんだし。」
 
 
『ツバメ』
 
この世界では、旅をして歩く人々のコトを、渡り鳥の名を借りてこう呼ぶ。
 
 
「−そうでしょう、金華?」
「…そうだな。」
"金華"と呼ばれた金髪の男が、窓のへりに座ったまた答えた。
 
窓の外では、明るい満月が見下ろしていた。
 
 
「       」
 
 
「−何?」
低く呟いた銀髪の男の言葉に、金華が問う。
 
「…なんでなの?」
「…銀華?」
不審そうな金華の言葉に、"銀華"と呼ばれた銀髪の男が俯く。
 
「…金華は、いっつもそうだよね。僕のいうコトに、何の文句もつけなくて…。」
「どうしたんだよ。」
「なんで、何も言わないんだよ!?」
「落ち着けって、銀華。」
「−っうるさい!!」
拒絶の言葉を吐いて、銀華がナイフを振りかざす。
 
金華の頬に赤い線が走り、赤い血が流れた。
 
 
「なんでだよ!?」
銀華が叫んびながら金華の体を窓に押しつけて。
痣になりそうなくらいの勢いでナイフの柄を叩きつける。
 
明るい満月が、金華の体についた無数の傷と血の滲んだ包帯を照らしていた。

 
 
「−…銀、痛ェ。」
「−っあ、ごめ…。」
金華が少しだけ顔をしかめて呟くと、銀華が慌てて離れた。
 
 
「…ごめん、包帯替えるね。」
そう言って銀華は、金華の右肩に巻かれた血の滲んだ包帯を外していく。
 
その下から、真新しい傷が出てくる。
真新しい真っ白な包帯を巻く銀華を見ながら、金華が左肩を上げて頬の血を拭う。
 
 
「−あ、そうやったらシャツ汚れちゃうじゃん。」
「右手塞がってんだからしょうがねぇだろ。」
「言ってくれればやるのに。」
「銀、傷触んな。血ィつく。」
銀華の言ったコトには答えずに、金華が言う。
 
「別に大丈夫だよ、血くらい。」
「違う。俺がやなの。」
サラリと言われた金華の言葉に、銀華は少し考える。
 
「ねぇ、それ昔から言ってるけど何なの?」
「そのまま。シャツ、着替えさして。」
「あ、うん。」
銀華が答えて、ボタンの閉められていないシャツをするりと脱がす。
 
真っ白なシャツの下から、今まで隠れていた左腕が覗く。
それは、肩から20pくらいのところで止まっていた。
切り口は、もうずいぶんと昔のもののようである。
 
 
「はい、腕通して?」
言われて、金華が真新しいシャツに腕を通す。
その途中で、巻いていた包帯がほどけた。
 
「あ、ごめん。今巻き直すね。」
銀華が言って、ほどけた包帯を全部ほどいてくるくるとまとめる。
 
 
「−…銀華?」

急に動きを止めた銀華に対して、金華が心配そうに言う。
 
銀華は黙ったまま、金華の右腕の、周りよりも古い大きな傷を見ていた。
 
 
「…これ、消えそうにないね…。」
「…いーよ、別に。」
「よくないよ。…金華は昔からそうだよね…。」
言いながら、銀華が少し俯く。
 
 
「これ…僕が初めて金華に傷をつけたときだって…なんで、僕のコト嫌いにならないの?」
「銀、落ち着けって。」

 
 
「−っ来ないで!!」
 
 
ナイフを手に取って、銀華が拒絶の言葉を叫ぶ。
その言葉に、金華がまるで魔法をかけられたかのように凍りつく。
 
 
「…これも昔からだよね…。金華は僕に命令されると絶対逆らわないんだ…。」
言いながら、銀華が少し泣きそうな顔で笑う。
 
 
「…銀、何する気だ…?」
「もう、嫌なんだ…もう、金華を傷つけたくないんだよ…。」
そう言って、銀華が首筋にナイフの刃を当てる。
 

 
「−今までごめんね…バイバイ、金華。」
 
 
銀華が小さく笑って、手に力を込める。
次の瞬間、赤い血が飛び散った。
 
 

銀ちゃん、発火点低すぎだよ…(笑)