本 音
後編
「―…えーと…久しぶり、凛。」
「…そうだな。」 「…。」 「…。」 沈黙がきまずい。 なんつーか、たぶん会話を成立させる気がない。2人とも。
「―…んっとさぁ、凛が俺のコト気に入らないのはわかってるけどー…。」
言いにくそうに、慧が口を開く。
「そろそろさ、何?仲直り?っていうか、仲良くしようぜ。…一応、仲間なんだし。」
言って、慧がへらっと笑う。
凛さんは、何も答えなかった。
「…ダメ、かな…?」
慧の言葉に、凛さんがタバコの煙をゆっくりと吐き出す。 軽く、俯いた。
「−…悪ィ、おまえらちょっと席はずしてくれるか?」
唐突な言葉に、顔を上げる。
隣で、紋が立ち上がった。
「了ー解。朱、行こ。」
「あ、うん。」 紋に促されて、足早に外に出る。 「…っていうか、ここ僕の部屋なのにね。」
小さく紋が呟いて、思わず笑ってしまった。
「―…それで?紋と朱を追い出してどうする気?」
軽く笑いながら、凛に問う。
凛は、ふっ、とタバコの煙を吐いた。
「―…わかってるとは思うけど、俺おまえのこと好きじゃねーわ。」
「うん、それは言われなくても知ってる。」 軽く笑いながら、呟く。
「でもさ、俺らがいつまでもこのままじゃいけないと思うんだよね。」
「朱がうるさい、って?」
「…ま、そんな感じ。」
言って、ふっ、と笑う。
「―…そーゆうとこがムカつくんだよ。」
言って、凛が吸っていたタバコを灰皿に押し付ける。 「やめた時だってそうだ。なんだってアイツのためなんかに―――」
その先の言葉は、声にならなかった。
凛の首筋が俺の左の手のひらで押さえられていたから。
押し付けられた背中と壁の間で、服の擦れた音がした。 足下で、タバコの火が燻る。
「―…それ以上言ったら、怒るぜ俺。」
凛を壁に押し付けたまま、軽く笑って言葉を吐いた。 きっと自分は、とても冷たい目をしているだろう。
「―…悪ィ。」 首を捕まれ、少し掠れた声で凛が言う。 それを聞いて、手を離した。 軽く咳払いをしながら、凛が床に座り直す。
カン、とひっくり返った銀色の灰皿を元に戻した。
灰皿にタバコの吸い殻を入れながら、凛がキャメルを箱から1本だして銜えた。 それに、ゆっくりとした動作で火を点ける。 「―…悪かったな…。」 大きく煙を吐き出してから、凛が呟いた。 「あ、俺こそごめんな。首、大丈夫?」 「あぁ…マジ殺られるかと思ったけどな。」 「さすがにそれはしねーわ。」 言って、軽く笑う。
ふっ、と凛が落としたように笑った。
少しの沈黙のあと、どちらからともなく笑い出した。 「―――おまえ、ホントに朱のこと大事なのな。」 軽く、バカにするかのように、凛が笑う。
「や、なんかとか言われたらムカつくじゃん。」 「バカにしたつもりじゃなかったんだけどな。悪ィ、ちょっと試した。」 軽く笑って、凛が灰を落とす。
「―…でも、気ィつけろよ?」
「…わかってる。」 仕事のジャマになるモノは、全て消すのが掟。 感情、人、その他諸々。
「―ったく、黄と同じコト言いやがって。」
「黄?アイツんなこと言ったんか。」 軽く驚きながら、凛が言う。
「そ。でもアイツの方がタチ悪ィな。朱に言いやがったし。」
「…あんま、過保護になんなよ?」 「…紋と同じコト言うしよー。」 「マジかよ、最悪。」 凛が軽く笑って、つられて俺も笑った。 「―じゃあ、一段落ついたってことで帰るわ。朱待たしてるし、紋にも悪いし。」
「あぁ、じゃーな。」 やる気なさそうに、凛が軽く手を振る。
そんな凛に、片手を差し出す。
「…何の真似だよ。」
怪訝そうな凛に、ニッコリと笑いかける。
「仲直り?の証拠に、握手。わかりやすいだろ。」
言うと、凛は心底呆れたような顔をしていた。
「―ホラ、凛。形だけでいいって、意地張るなよ。」
言って、クスクスと笑いかける。
「―誰が。」
呟いて、凛が軽く手を叩く。
と、言うよりは、軽くはたかれた感じ。
素直じゃねぇなー、と呟いて、クスクスと笑う。
「―んじゃ、そのうちまた、な。」
笑いながら言って、玄関で靴を履く。
手を振って、ドアノブに手をかける。
「―…慧。」
唐突に名前を呼ばれて、少しビックリしながら振り返る。
「…来る時は、手土産持ってこいよ。」
呟くように吐かれた言葉に、ふっ、と笑う。
「りょーかい。」
言って、クスクスと笑った。 「―…あの2人、大丈夫かなぁ。」
軽くため息をついて、呟く。
「大丈夫でしょ。2人とも子どもじゃないんだし?」
隣で、紋がクスクスと笑う。
「…2人とも、素直じゃなさそうだけど。」
呟くと、紋が確かに、と笑う。
「あー、でも正直追い出してくれて助かったかも。」
「え、なんで?気まずかった?」
「ん、それもあるけどさ。俺、タバコってダメなんだよね。」 不思議そうな顔をする紋に、軽く笑いかける。
「あ、なるほどね。凛はヘビースモーカーだもんねぇ。」
納得したように、紋が笑う。
もう、半年も前のことなのに。
タバコは、嫌な思い出しか残っていない。
軽く俯いた時、ガチャ、とドアが開いた。
「―朱、おまたせ。」
扉の陰から、慧が顔を出した。
「慧、おかえり。」
「話、ついた?」 優しい笑顔で、紋が問う。
「ん、とりあえずは。ごめんな、紋。アリガト。」
困ったような笑みで、慧が返す。
「―んじゃ、帰りますか。」
言って、慧が笑いかけてくる。
それに対して、笑って頷いた。
「またな、紋。」
「じゃましてごめんなー。」
「いえいえ、いつでもどうぞー。」
バイバイと手を振る紋に、同じように軽く手を振りながら、歩き出した。
「―…なあ、慧。」
少し歩いたところで、小さく呟いた。
「ん?」
それに対して、慧が軽く笑いかけてくる。
「―…なんで、やめたの?」
聞くと、慧が軽く首を傾げる。
「…ん〜っとー…プレッシャー、かな?」
「プレッシャー?」 少し言いにくそうな慧に、聞き返す。
「…俺って、別のとこからきただろ?なのにいきなり3に入ってさ。正直、まわりの目が怖かった。」
軽く笑って、慧が呟く。
何を言えばいいのか、わからなかった。
「―…なーんてなっ。」
「…は?」
唐突な言葉に、かなり間抜けな声を出す。
「嘘だよ。ただ単に、人の上に立つのが性にあってなかっただけ。」
言って、慧がクスクスと笑う。
「え、だって前のとこで2番だったんじゃねぇの?」
「それはそうだけどさ。ずっとやってて上がってきたのと、いきなりとじゃわけが違うじゃん。」
「あ、確かに…。」
だろ?と慧が笑う。
いつもと同じ、笑顔。
さっきは、少し心細くも見えた。
きっと、滅多に見せない。
少しの弱さと、本音。
それを見せてくれるということ。
少しは、特別だと思ってもいいのかな?
それが、ただの逃げ道だったとしても。 俺は、少しでも慧を救えたのだろうか。
傍に、いられるのだろうか。
えー、長いモノ、お疲れさまでした(笑)こんなに長くなるはずじゃなかったんだけどなぁ…(遠い目
まぁ何はともあれ、慧と凛のエピソードが書けたので満足♪ ちなみに凛は未成年ですけど気にしない気にしない(笑)だせなかったけど、慧もタバコ吸いますよー(笑) 朱がタバコだめなのは後ほど語ります、たぶん。
最後の何行か意味不明なのは流してください(待ってよ |