bloodshed
 
 
 
後編
 
 
 
 
 
「−社長!早くお逃げになってください!!」
 
少し広い部屋の中で、誰かの叫び声が響く。
 
 
 
「−大丈夫だ、鈴木君。ヤツらもここまでは来れんさ。」
「−しかし、社長!!」
「何百人も雇ったのだ…。たかが、2人くらい…。」
少し太った中年の男が、答える。
 
部屋の中にいるのは、その、「たかが2人」が潰そうとしている会社の社長と、その秘書らしき男。
その周りには、数人の拳銃を持った男たち。
 
 
 
「…鈴木君。君は逃げて構わん…。」
「…いえ、私は最後まで社長のお側にいます。」
小さく呟いた社長の言葉に、まっすぐにその目を見て、男が答えた。
 
 
その時、大きな音を立てて、ドアが開いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
「−アンタが、ここの社長?」
 
銃をしっかりと構えて、近づきながら聞く。
 
 
 
「あ、あぁ…。」
 
中年の男が、1歩下がりながら答えた。
その隣にいる若い男はたぶん秘書なのだろう。
 
その周りを数人の男が取り囲んで、道を閉ざす。
 
その手にはしっかり銃が構えられていて。
しっかりと銃口をこちらに向けている。
 
 
 
 
 
「−凛、大丈夫か?」
 
軽く後ろを振り返りながら、問う。
 
 
「問題ねー。さっさと終わらせろよ。」
「了解。」
答えて、前を向く。
 
 
問題ない、と言っているが、凛の顔色はかなり悪い。
撃たれてからけっこう時間が経ってるし。
掠っただけとは言え、出血もかなりの量。
 
けれど、その右手にはしっかりと銃を持っていて。
その辺はさすがと言うか、何と言うか。
 
 
 
「−…君たちの目的は、何なんだ?」
 
脅えた表情で、中年の男が聞いてくる。
 
 
 
「−この会社を潰すこと。」
 
簡潔に答えて、軽く笑う。
 
 
周りにいた男たちが、一斉に銃を持つ手に力を入れたのがわかった。
 
 
 
「…たった2人でくるとはな。なめられたものだ。」
「こんなん、2人で十分なんだよ。」
まっすぐに、中年の男を見て言う。
 
 
ゆっくりと、まわりの男たちを見る。
揃って黒いスーツを見に纏った、4人の男たち。
 
その表情は、恐怖を押し隠しているように見えた。
 
 
 
「−凛、いいか?」
 
前を向いたまま、問う。
 
 
「−問題、ねー。」
軽く息を吐いて、凛が答える。
 
少し、沈黙が流れる。
 
 
 
 
凛が銃を構えたその瞬間、数発の発砲音が響いた。
 
 
 
すぐに音は止んで、薄い煙が辺りを取り巻く。
それもすぐに消えて、ゆっくりと男たちが倒れた。
 
残った男たちの顔に、一層恐怖の色が見えた。
 
 
 
 
 
「−…当たってねぇか?」
 
目だけで、後ろを振り返る。
凛が、ゆっくりと銃を下ろした。
 
 
「ギリ。おまえ変な方向に避けんなよ。」
「俺に当たれってのかよ。」
「当たりゃよかったのに。」
凛の言葉に、おい、と返す。
 
 
 
 
「−…さーて、アンタらで最後なんだけど。」
 
残った2人の男たちに銃を向けて、言う。
 
 
ふと気づいて、銃を下ろす。
今ので弾がなくなったらしい。
 
空になった弾倉を、音を立てて床に落とす。
新しいのを探しながら、目の前の男たちに軽く笑いかける。
 
 
「最期に言いたいこととかは?俺優しーから聞いてやるぜ?」
 
言うと、後ろで凛がアホか、と呟いた。
 
 
 
「…彼は、見逃してやってくれないか?」
「社長!!」
秘書らしき男が、驚きの声を上げる。
 
 
まぁ、確かに。秘書は関係ないかもな。
でも、見逃して後でなんかあると面倒だしなぁ。
 

 
 
「−見逃してやれば?」

 
一人で考えていたところに、唐突に声が聞こえてきた。
 
 
「…珍しく甘いコト言ってんじゃん。」
いつの間にか隣まで歩いてきた凛の方を見て、少し驚きながら言う。
 
 
「どうせこの状態じゃ続けらんねーだろうし。殺っても殺んなくても同じだろ。」
面倒臭そうに、凛が吐き捨てる。
 
「…ま、確かに…んじゃ、今回は見逃してやるよ。さっさと海外にでも逃げれば?」
空のままの銃をしまって、軽く笑う。
 
振り返って、もう歩き始めている凛の背を追おうとする。
その時、視界の端で何かが動いて目を止めた。
 
 
そこで見たモノは、凛の背中に銃を向ける男の姿。
 
 
 
 
「−っ凛!!」
 
 
叫んだ瞬間、重なった銃声が響いた。
 
銃の落ちる音に振り返ると、脅えた表情の中年男と、その横で脇腹を押さえる男がいた。
 
 
 
「…凛、どーゆうことだ?」
「…おまえ、気付いてなかったのかよ。」
凛がため息混じりに言って、隣まで歩いて来る。
 
 
「黒幕はコイツだったってコト。」
 
言って、凛が男を指差す。
黒いスーツが、血に濡れているのがわかった。
 
 
「−…いつから、気付いてた…。」
 
膝をついているので、少し見上げるような感じで男が聞いてくる。
その声は、消え入りそうなほど、か細い。
 
 
「最初っから。長いコトこの仕事やってるもんで。」
「…まだ若いのに…大した、もんだな…。君らは、どこの所属だ?
「…。」
「…冥土の、土産に…教えてくれよ。」
そう言って、男は薄く笑う。
 
抑えている手の間から、血が零れた。
 
 
 
「−Crimson。」
 
言いながら、凛は男に銃を向ける。
 
 
 
「−…そう、か…紋人 ( アヤト )のところか…。」
 
軽く笑って、男が呟く。
 
 
「−…アンタ…。」
「…昔の…仕事仲間、だよ…。」
そう言って、男は軽く笑って、軽く目を閉じた。
 
 
 
それを合図にするかのように、凛が引き金を引いた。
 
 
パン、と乾いた銃声と共に、赤が飛び散る。
せめて、宿り主の跡だけでも残そうとしたかのように。
 
 
 
「−鈴木君が…そんな…。」
 
一部始終を、ただ震えて見ていただけの男が口を開く。
 
 
 
「…アンタも、おめでたいヤツだな。」
 
凛が、ため息混じりに呟く。
 
 
「アンタ、命狙われてたんだぜ?」
「…そんな…鈴木、君が…。」
 
 
「−…ヒトのこと何も見てねーくせに、ヒトの上になんか立つんじゃねーよ。」
 
酷く苛立った様子で、凛が男に銃を向ける。

 
 
「−っ!!」

 
脅える男を、凛はただまっすぐに見下ろしていた。
 

 
 
 
「−凛。」

 
 
その声を聞いて、凛は目だけで振り返る。
 
 
 
「もういい。…いいから。」
まっすぐに、凛の目を見ながら言う。
 
少しの沈黙の後、凛が銃を下ろした。
 
 
 
凛が苛立ってるのはわかる。
 
それが、社長なのか秘書なのか。
自分自身に向けられていたのかどうかは、わからないけれど。
 
 
 
「−…帰るぞ。」
 
凛の腕を引っ張って、歩き出す。
 
一面に広がる血の海で、肩を落とす男を1人残して。


 
 
 
 
 
「−あれ、黄じゃん。どしたのー?」
 
いつものように、篠が笑う。
 
 
「尚の弾当たっちまったんだけど、薬あるか?」
「え、黄が?」
少し驚いたように、篠が聞き返してくる。
 
「や、凛が。…つか、撃ったの俺なんだけどさ。」
「あらら〜…ちょっと待ってねー。」
呆れたような顔で笑いながら、篠が部屋の中へと姿を消す。
 
 
「−ハイ、これね。」
「サンキュ。」
小さな入れ物を受け取りながら、軽く笑う。
 
「僕やろうか?」
「ん、いーわ。血出てるしな。」
「あー…ゴメン。」
言って、篠が申し訳なさそうに笑う。
 
「いいって。薬、アリガトな。」
「凛にお大事に、って言っておいて。」
了解、と言って笑う。
バイバイ、と手を振る篠をあとに、部屋を出た。
 
 
 
 
「−凛、薬もらって来たぞ。」
 
表で座っていた凛に、駆け寄る。
 
 
「大丈夫か?」
「ん、掠っただけだからそんな傷深くねーし。」
「でも、かなり血出てたよなぁ。顔青白いし、病人みてぇ。」
「何時間経ってると思って…てかこれ取れ。」
「あー、ハイハイ。」
答えて、腕に巻かれた布に手をかける。
少しキツめに結んでいたため、腕に巻いたモノが片手では取れなかったらしい。
 
それか、もうあまり力が入らないのか。
 
 
 
「−…ってーよ…。」
「…文句ばっかだな、おまえ。」
軽くため息をついて、赤黒く変色した布を引っ張る。
 
一瞬だけ、凛が顔をしかめた。
 
 
「−しみても文句言うなよ。」
 
言いながら、傷口に薬を塗る。
凛が、空いている方の手で頬にも薬をつける。
 
さすが篠と言うか、さっきまで止まる気配もなかった血が、いとも簡単に止まってしまった。
 
 
「−篠がお大事にー、だってよ。」
「あぁ。…おまえも、ありがとな。」
「は?何が?」
まさか、凛の口から礼の言葉が出るとは。
予想外すぎて、かなり驚いた。
 
 
「あの、男が撃った時。おまえいなかったらけっこう際どかったし。」
「あぁ…あれな。弾切れててたから、間に合わなくて凛に任せただけなんだけどな。」
少しふざけて、笑う。
 
「…。」
「…まぁ、結果オーライで。」
呆れ顔の凛を見て、慌ててごまかす。
 
 
 
「−……最後、止めてくれてサンキュ。」
 
そっぽを向きながら、凛が呟く。
こーゆうとこは、ホント、可愛いガキなんだけどな。
 
 
「んじゃ、ケガさせたのチャラってことで。」
小さく、クスクスと笑いながら言う。
 
 
 
「…あと、アイツのこと、紋には言うな。」
 
小さく、けれどはっきりと、言葉が紡がれる。
 
「…あぁ、アイツか。」
すぐに、思い当たった。
あの、秘書をやっていた若い男。
 
 
「別に言わねーけど…なんで?」
「…とりあえず、黙っといてくれねーか?」
凛の言葉に、少し考える。
 
 
「−…紋人、って…紋のこと、だよな…?」
 
その問いに、凛は何も答えなかった。
ただ、まっすぐな強い瞳で、こっちを見ているだけ。
 
 
「…わかったよ…。」
ため息混じりに、呟く。
 
 
「…悪ィな。じゃあ、また。」
「おぅ。」
凛の後ろ姿を見ながら、言う
 
 
少し附に落ちないけれど、とりあえずは言われた通りにしようと思った。
 
きっと、凛にもいろいろと考えるところがあるんだろうし。
それに、俺は話してくれるまで待つことしかできないから。
 
 
俺は、どれだけこの組織のことをわかっているのだろう。
 
 
 
1人考えながら、タバコに火を点けた。
 
 
 
 
 

  
 
ヒト殺しをさせてみよう第2騨♪
残るは第3騨〜♪(笑)ちなみに白と哉の話。

初めてまともに黄が出てきた気がする(うわ
黄は人間じゃないと思います、たぶん(笑)動体視力がものすごくいいのです。
それに反応して弾避けれる凛も、すごい反射神経なんだけどね(笑)
冒頭のヤツはこの2人だからできるコト。あ、でも紋とかも普通にできそう(笑)
紋が何者かはまた後で語ります、たぶん(笑)
 
ちなみに題名の意味は、『血の雨、流血、殺人、虐殺』とか言う意味。
血関係のステキな言葉ないかと和英を引いてたら見つけた(笑)