bloodshed
前編
声が響く。
雨のように降る銃弾の中で、それでもしっかりと。
「−左、正面。右、左。あ、後ろ。」
上の方から聞こえる声に、飛んでくる弾を避ける。
目の前には、銃を向けて撃ってくる数人の男。
「−黄、おまえもやれよ。」
弾から逃れるように、柱に身を潜めながら言う。
「面倒ー。俺はココでゆっくりーうわっ!!」
言い終わらないうちに、1発向けて撃つ。
「あっぶねー…わかった、やるよ。ったく、凛はこえーなぁ…。」
ぶつぶつと文句を言いながら、同じように柱に身を潜める。
「つーか、おまえ今マジで撃ったろ。」
「どーせおまえはよけんだろ。」
「よけなきゃ死ぬって。」
「そりゃそうだろうな。」
「あー、どうでもよさそうだこと。」
言いながら、銃に手をかけて機会をうかがう。
「俺先行くから、援護頼むわ。」
「ヘマすんなよ。」
「誰がすっかよ。…てか凛、俺にあてんなよ…?」
少し不安気な顔で、黄が言って。
それに対して、軽く笑いかける。
「おまえが避けりゃいーだろ。」
「や、いくら俺でも後ろからの弾はよけらんねーって。」
「使えねーな。」
「おいこら−…っと。」
黄の顔のすぐ横を、弾が掠めていった。
「−…そろそろ出て行かねーと向こうもシビレ切らしちまうな。準備いいか、凛?」
「いつでも。」
「んじゃ、せー…の!」
2人で呼吸を合わせて、一気に出ていく。
ざっと見ただけで十数人。
まぁ軽いだろうな。
「−凛、頼んだ。」
言い残して、黄は階段の奥へと消えた。
(side:Katsumi)
部屋を出て階段を昇る。
下からは凛の銃を撃つ音が聞こえてきた。
尚の造る銃は個人に合わせて細かく違うけれど、銃を撃つ時に独特の音がする。
まぁ、使ってる俺らじゃないとわからないくらいに微妙だけど。
「…うわ、まだいんのかよ。」
ため息と一緒に、呟く。
けっこう始末したはずなのにどんどん出てくる。
たぶん、雇われたヤツらだろう。
「…金のムダ遣いしてんな。」
ため息まじりに、相手に一発ずつ撃ち込む。
もちろん即死。
「…全部、かな?」
奥への道を確認する。
先に見た地図を思い出し、一番奥まできたコトを確認した。
全部始末したコトも確認しながら、凛を待つか先に行くか少し悩む。
「…待っててやっか。」
たぶんすぐ来るだろうし。
凛があんなヤツらに苦戦するはずがない。
タバコに火を点けて、深く一服する。
「−っ!」
誰かが階段を昇ってくる気配を感じて、急いでタバコを消す。
凛とは違う、誰か。
たぶん、同業者だろう。
「…ムダ遣いでもなかったか。」
柱に隠れて様子をうかがう。
−気づかれたな…。
そいつが部屋に入った時の、一瞬の気配で感じ取る。
その証拠のように、こっちに一直線に歩いてくる。
−…気配、消してたつもりなんだけどなぁ、一応。
少し苦笑いしつつ、銃を持つ手に力をこめる。
(side:Rin)
「−…どうすっかな…。」
黄が上に行ったのを確認して、柱に身を潜める。
確認しただけでも16人。でもどんどん増えてきてる。
たぶん、雇われたヤツら。
「−金のムダ遣い、だな。」
呟いてから一気に撃つ。
1人に1発、ちゃんと心臓に。
「…いすぎ。」
ため息と一緒に、呟く。
段々と倒れて、増えていくモノ。
足元は俗に言う血の海。
それに少し足を取られながらも、ちゃんと照準は合ってる。
そんなにも自分に染みついている、人殺しの術。
何分かそうしていたのかわからないけれど。
ヒトがいなくなったのか恐れて出てこないのか、銃の音は止んだ。
「−…行くか。」
改めて床に転がっているモノを見て少し居たたまれなくなる。
−…まぁ、殺ったのは俺か。
それ以上考えないようにして、部屋を出て階段を昇る。
そこにも、人だったモノが点々と転がっていた。
その時、小さな物音がして振り向いた。
1人の男が、わき腹を抑えて肩で息をしながら、銃をこっちに向けていた。
−…バカなヤツ…。
俺が通り過ぎるのを待っていれば助かったかもしれないのに。
ゆっくりと銃を構えて、男に照準を合わせる。
男は少し口の端を上げて笑った。
次の瞬間、4発の銃声が響いた。
1人は倒れ、1人は静かに銃を下ろす。
−…掠ったか…。
左の二の腕あたりから、服が破れて血が滲んでいた。
少しだけ、痛んだ。
「−…惜しいヤツだったな…。」
生きていれば、それなりには仕事ができたかもしれない。
「−悪かったな。」
呟くように言って階段を昇る。
黄の残した道標を辿って行くと、少し大きな部屋に出た。
床に転がる沢山のモノの中で、微かに誰かの気配を感じ取る。
たぶん同業者だろう、柱に身を潜めて、様子を伺っているようだった。
銃を持つ手に力を入れながら、1歩1歩近付く。
−…ここが限界だな…。
相手と自分の間合いギリギリのトコロで足を止める。
一息ついた瞬間、2発の音が重なって銃声が1発響いた。
「 「
−っおまえかよ 」 」
同時に同じ言葉を発して、銃を下ろす。
「あー焦った…てか掠ったな。悪ィ、大丈夫か?」
「俺はいたって普通の人間なもんで。」
「おいおい、俺が人間じゃねーみたいな言い草だな。」
「…この距離で弾避けれる動体視力の持ち主が、人間かよ。」
現に黄はちゃんと避けてて、俺は左の頬を掠ってる。
まず、それが普通。
「てか、おまえ腕もケガしてんじゃん。どーしたー?」
そう言いながら黄が腕を引っ張る。
「いってーよ、引っ張んな。つかおまえが悪ィんだよ。」
「え、俺何かしたか?」
「階段で生きてるヤツいたんだよ。ちゃんと1発で殺れって言ってんのに。」
「…マジ…?」
「マジ。」
言うと、黄がすまなそうに笑う。
「…悪ィ。でも、おまえがくらうとは。珍しいな。」
「…左右と正面。あいにく普通の人間なんで。」
「だからよー…つか、なんで相手が3発撃つの待ってたワケ?」
おまえだったら、相手が撃つ前に撃てんだろ
黄の言葉に、別に、と答える。
「…ま、いーけど。てか悪ィ、薬ねーや。」
ポケットをごそごそ探っていた黄が言う。
「おまえもか…俺もちょうど切らしてんだよ。」
「来る時に篠んとこ寄ってくりゃよかったな…てか、血止まんねぇな。」
ジワジワと確実に流れ出て、周りの服を血色に染めていく。
「あぁ、弾になんかやってたんじゃねーの?それこそ篠の得意そうなヤツ。」
「それっぽいなー…とりあえず止血すっか。」
「頼むわ。」
ビリビリと服を破いて、少しキツめに結ばれる。
「−…いって。」
「ちょいガマンしとけ。」
言って、黄が布をぎゅっと縛る。
容赦なく腕が締め付けられて、軽く眉をひそめる。
「血止まんねーこと以外は大丈夫か?」
「たぶん。体動くし。」
「そっか。ま、どっちにしろさっさと終わらせて帰った方がいーな。」
そう言って黄が立ち上がる。
「そーだな…行くか。」
手の甲で頬の血を拭って、同じように立ち上がる。
「−…なぁ、おまえの使ってる弾って、尚が作ったヤツか?」
唐突な問いに、黄が振り返る。
「そりゃ、当たり前だろ。」
「ってことは、当然篠のクスリ使ってるよな。」
「あ…。」
「…。」
それを証明するかのように、拭ったところから血が滲んで流れる。
それが、止まる気配はない。
「…これは、ホントにやばいな。さっさと終わらせるか。」
「だな。」
黄の言葉に、ため息混じりに答えた。
どこかの会社を潰しにかかってるお二人さん。 凛が微妙にピンチです(笑) |