ね こ の 

 


 
冷たい空気に小さく身震いして、小さく欠伸をする。

始発が動き出す時間帯、あたしは家路を足早に歩く。


夏だったら眩い太陽に殺されそうで。
冬になったら凍る空気に、殺されそう。

1年中、安息はないのかとどうでもいいコトを思った。


 
道端で足早に駆け抜ける馴染みの猫。

あたしの目の前で足を止めて、まんまるな瞳で見上げてくる。

軽く微笑んで、あたしはソレに手を伸ばす。
途端に走り出して、猫は暗闇へと消えた。


いつも、そんなコトの繰り返し。


自由気ままな猫。

警戒心が強いクセに、構って欲しくて。
だけどきっと、傷つくのが恐いから逃げる。

それはきっと、ジレンマ。
ハリネズミだっけ。ヤマアラシだったかも。まぁ、どっちでもいいんだけど。

それよりももう眠いし、さっさと家に帰って寝よう、うん。


さっきよりも大きな欠伸をして、あたしは歩みを早めた。



不意に、目の前に大きな月が現れて。
思わずソレに、足を止めた。

あの猫の眼みたいにまぁるい満月。
見るのなんていつ振りだろう。

きっと、あたしが気づかないでいただけなんだ。
だってずっと、ソコにある。


なんとなく一人で笑った。

明日もきっと、今日と同じような日が過ぎて。
でもきっと、少しずつ変わっていく。


月が満ちて欠けるように。

少しずつ、だけど確実に。


明日はあの猫も、頭を撫でさせてくれるかもしれない。
そう思うと、こんな日々も悪くない。

似合わない鼻歌なんか口ずさみながら、家の鍵を開ける。



タダイマ、あたし。

オカエリ、あたし。



明日も頑張って、生きてみようかななんて、ぼんやり思った。





2006/12/10
 
バイト帰りに月がすんごくキレイでネタったもの。
「あたし」はきっとまんまあたし(笑)