し ろ い の ど



駅からの道を、ゆっくりと歩く。

随分と寒くなったなぁと思いながら、一つ欠伸をした。


階段を昇り、ドアの前で鍵を探る。
鍵穴に挿し込もうとして違うことに気づき、もう1つの鍵を挿す。
いつも自分の家のと間違うんだよなぁと苦笑しつつ、遠慮がちにドアを開いた。


始発が動き出したこの時間、彼女はまだ眠りの中だろう。

今日はドコで寝ていることやら。


後ろ手に鍵をかけて、慣れた部屋に足を踏み入れる。

マグカップだけがおかれた流し。
昨日もろくに何も食べずに終わったのだろうか。


キッチンと部屋を隔てるドアを開けると、予想通り彼女は床に寝転んでいて。
呆れを通り越したため息が零れる。

傍らのベッドはしわもなくキレイなまま。
寒かったのか、毛布だけが薄くかけられていた。


わざわざ身体も伸ばせない固い床で寝る意味が、僕には理解しがたかった。


起こしてベッドに寝かせるべきか、起きないように運んであげるべきか。
はたまた、このまま放っておくべきか。

少しの間考えて、またため息をついた。



カーテンで遮られた真っ暗な部屋。
なのに外からの微かな明かりが漏れていて。

闇の中から、彼女の白い首筋を浮かび上がらせていた。



特に何を考えたわけではなくて。
ただなんとなく、ぼんやりと。

気づいたら指先に柔らかい感触があって。

白くて柔らかくて。
マシュマロみたいだなとか、どうでもいいことを思った。



唐突に、目を開けた彼女と目が合って。

見下ろしたその瞳には恐怖も侮蔑の色もなく。
ただ、まっすぐに僕を見ていた。


なんとなく、それを見ていられなくて。

目を逸らして、指に力を入れた。


不意に、頬に何かが触れて。

目の前で、彼女が優しい笑みを浮かべていた。

冷たい指先が頬を撫でて、ゆっくりと瞳が閉じられた。
キレイなキレイなその笑顔に、泣きそうになった。


俯いたまま、ゆっくりと手の力を抜いて。
彼女がゆっくりと息を吸って、ゆっくりと吐いた。



僕は顔を上げられないまま、黙って俯いていた。

泣きたいような泣きたくないような。
どっちにしろ涙なんて出てきやしなくて。

思わず、嘲笑が漏れる。



不意に、暖かさを感じて。
それが彼女の腕の中だと気づくのに、少し時間がかかった。


ちょうど彼女の心臓の所に頭があって。

ゆっくりとした鼓動が、耳に響いていた。


ゆっくりと、彼女の指が僕の髪を優しく撫でる。
その仕草に泣きそうになって、だけど軽く苛立って。

白く浮かび上がる首筋に口づけて。
紅い紅い華を咲かせる。


くすぐったそうに、彼女が小さく笑った。




あぁ、きっと僕は

この笑顔に生かされて、殺されるのだろう






◇あとがき◇
 
何かの話と似てるとかつっこんじゃダメさ(笑)
あたしの話なんて大体みんな同じような話さ!(開き直った
…今度こんな話書いたら、次は首しめられて抵抗するヤツにするヨ(笑)

すごいどうでもいいけど、あたし彼女と同じ状態でケータイでこの話書いてました(笑)
ベッド入ると寝れなくなるから、床でけっこう寝てたりとかなんすよ。
最近は寒くなったからおとなしくベッド入ってるけども。
 
(2006/10/24)