喋る影
夕暮れ時に、外を歩く時
後ろを振り返るのが、恐かった
大きく伸びた影に、飲み込まれてしまいそうで
それが、とても恐かった
幼い頃のそんな感情をすっかり忘れて。
特別に不自由もなく、私は育った。
良くもなく悪くもなく、ただ流れていく人生だった。
声が聞こえてきたのは、いつからだろう。
ささやくように、ひっそりと。
頭に直接語りかけてくるかのような、声。
恐怖も何も感じなくなった夕暮れの道で。
ある日、唐突に理解した。
それは、影の声だったのだ。
それは、私に楽しいかと聞いてきた。
生きていて、楽しいのか、と。
楽しいわけがない
瞬時に、私はそう答えた。
それに対して、影はくつくつと笑って呟いた。
なら、消えちゃえよ
頭の中で、悪戯っぽい声が響く。
それに対して、私は軽く笑った。
じゃあ、消してよ、と。
その言葉に、影が笑う。
声も上げていないのに、なぜか笑っていると、思った。
地面に映る、等身大の影。
夕日に照らされたそれは、徐々に大きくなっていく。
地面から伸びた影が壁を伝って。
壁に、私と同じ形の影が映し出された。
影が片手を上げて手招きをする。
私は、ただ黙ってそれに従った。
誘われるまま、影の手に掌を合わせる。
それは、私の手とぴったり重なった。
重なった手が、壁の中へと入り込む。
まるで、重ねた黒に溶けるかのように。
段々と消えていく自分の身体を見ながら、ぼんやりと考えていた。
これで、消えれるのだ、と。
私はすっかり黒に溶け、壁には影が残った。
私の形をした、真っ黒な影が。
それも、段々と小さくなっていって。
遂には、消えてしまった。
後に残ったモノは、夕日に赤く染まる壁と。
何一つ変わることなく流れていく、世界だけだった。
2005/1/14
微妙ダーク(笑)影とすり替わる話にしようと思ったんだけどね。
淡々と不思議な話で終わらせようと思って。要は面倒だっただけとも言う(笑)
今さらですが、このお題って会話文書いてません。なんとなくなんだけど。
そーゆう方向で進めようかと思うので。
なので、影との会話もまともなモノがないのですヨ(笑) |