逆まわりの時計

 

何が、起きたのだろう
 
 
天井を見上げながら、ぼんやりと思った。
 
 
ここは、自分の部屋…?
 
 
自分が仰向けになっていることに気付き、身体を起こす。
 
目の前に手をかざしてみた。
何も、変わったところなんてなかった。
 
 
変わったところ?
何を言ってるんだろう…
 
 
自分の考えに疑問を持ち、ふと壁にかかった時計を見る。
あと少しで、12時になるところだった。
時計は、変わらずに動いていた。
 
いつもと変わらない、ただの日常。
 
 
不意に、ドアを叩く音がした。
反射的にそれに応えると、ゆっくりとドアが開く。
そこから覗いたのは、見知らぬ顔。
 
 
いや、知っている
コイツは−
 
早く、早く逃げないと
 
 
思いとは裏腹に、足はその場に縫い止められたように動かない。
そう思ってもいないのに、顔が勝手に愛想笑いをつくる。
 
ゆっくりと、目の前の男の腕が動いた。
その先に見える、銀色に光るモノ。
 
 
あぁ、そうだ
コイツは、俺を刺し殺すんだ
 
 
瞬間、鈍い痛みが走った。
腹部に感じた異物感が消えるのと同時に、鋭い痛みへと変わる。
 
立っていられなくて、その場に倒れ込む。
その上から覆いかぶさるようにして、男が腕を振り上げる。
 
 
ざく、ぐちゃ、という音が耳に届くたびに、痛みに喘ぐ。
 
気が狂いそうな、死んだ方がマシな程の、痛み。
 
 
体が動かなくなって、声も上げられなくなって。
カラン、と血に濡れた凶器を捨て、男はゆっくりとドアの向こうに消えた。
 
その背中をぼんやりと見届けながら、目の前に投げ出された手を見る。
 
真っ赤に染まった手。
いつもとは、違うモノ。
 
 
 
カチ、と少し大げさな音を聞き、視線の先を見る。
12時を指した時計が、ゆっくりと動き始める。
 
 
 
そうだ
さっきも、同じモノを見た…
 
 
 
小さな音を立てて、ゆっくりと秒針が動く。
今までの動きに逆らって、逆向きに。
 
まるで、時間を戻してしまうかのように。
 
 
 
また、戻るのか
 
 
赤く霞んでいく視界の中で、ぼんやりと考えた。
 
 
 
死んでしまえたらいいのに
 
 
ゆっくりと瞼が落ちてきて、暗闇が襲う。
目を開けたら、目の前に天井が見えるのだろう。
 
さっきと、同じように。
 
 
 
俺は
あと何度、刺し殺されるのだろう
 
 

2004/12/13
 
 
一度はやってみたいと思ってた、時間が戻るネタ。
やるとしたら裏だろうなぁとなぜか思ってました(笑)
 
よくわからないのはいつものコトで(待て)
見知らぬ男に殺されるなんてかわいそうだね(うわぁ
凶器は包丁がいいかナイフがいいか悩んだため、曖昧な表現でやめちゃいました★(笑)