絶対安全剃刀
この世に 絶対安全なモノなんて
存在しない
一つ一つの言葉ですら、このココロに突き刺さる
「−
朱い髪を風になびかせて、女が聞く。
その腕には、神経質なくらい平行にひかれたいくつもの傷。
その手には、そこら辺に売っていそうな安全剃刀。
「こんなんじゃ切れないじゃん。」
そう言って女は刃を指にあててすっと引く。その指はキレイなまま。
「知らねーの、
"蒼華"と呼ばれた蒼い髪の男が、"朱華"と呼ばれた女の手から剃刀をとる。
その腕には、幾重にも重なったいくつもの傷。
それらの傷は、死にたくてつけられたモノではない。
ただ生きているコトを確かめるため。
自分がココに存在しているコトを確かめるため。
「−ほら、こっち側が切れんの。」
慣れた手つきでそれを分解して、刃をひっくり返す。
すっと指先にひかれた線から、血が滲む。
ね、って言って蒼華が笑う。
「へー、初めて知った。」
朱華が感心したように言う。
蒼華から刃を受け取って、同じように朱華が指の上をすべらせる。
今度は鋭い刃が肌を切る。
「わー、安全じゃないじゃん『安全剃刀』って。」
朱華が笑いながら言う。
「でもホラ。フツウの人はこーゆうコトしないし。」
蒼華も笑って返す。
それは、とてもキレイな笑顔。
「−蒼華ってさー、キレイだよね。」
「は?何いきなり。」
唐突に呟かれた言葉に蒼華は驚く。
「なんとなく。蒼い髪とか目とかキレイだな、って。」
「それ殺し文句ー?」
「かもね。」
笑って聞く蒼華に、朱華はクスクスと笑って返す。
「そーゆうカワイイコト言うと襲いたくなるじゃんか。」
「こらこらー。」
言って2人ともクスクスと笑う。
「−てか朱華だってキレイじゃん。」
「どこがー?」
「んーと、朱い髪に朱い目に。」
「あたし言ったやつじゃん。」
朱華の言葉に、蒼華は笑う。
「それとー。」
言って、蒼華は朱華の手をとる。
「−白い肌。よく血が映える。」
そう言って、朱華の指先に口づける。
離れて少ししてから、また血が滲み始める。
「俺は、すごいキレイだと思うよ。」
今度は、軽く唇に触れる。
「傷だらけの腕とか、ポケットに隠してるナイフとか。朱華全部がキレイ。大好き。」
「…蒼華…。」
「ん?」
「聞いてて恥ずかしい。」
「え、ごめんごめん。でもホントに。」
ニッコリと笑って何の衒いもなく蒼華が言う。
そんな蒼華に対して、朱華はちょっと照れて俯く。
「−…あたしも、だよ。」
「ん?」
「あたしも…傷だらけの腕とか、隠してるナイフとか、蒼華の全部、大好き。」
「うわっ、朱華はずかしー。」
「うるさい。あたしが一番恥ずかしいんだからねー。」
「ごめんごめん。アリガト。」
照れくさそうな朱華を見て、蒼華が笑って言う。
蒼華は朱華の、朱華は蒼華の剃刀
決して自分を裏切らず、傷つけるコトのない安全剃刀
自分さえ望めば、すぐにその刃をひっくり返してお互いを殺してくれる
優しい優しい 絶対安全剃刀
あとがき
…なんか終わってみたら単なるカップル話になっちゃった(笑)
サイコなカップルって書いてて楽しいデス(ぇ 安全剃刀ってホント安全だよね。あ、それが売りですが(笑)
とってみたらホント単なる刃ですよ(だからなんだ) |