幼い約束
特に理由はなかった
ただ、理由をくれたから
生きていたいとは、思わなかった。 特に、死にたいとも思わなかった。
ただ、生きていたくない、とは思った。
うっすらと目を開けると、ぼんやりとした目に白い天井が映った。
ここはどこだろう、とぼんやりとした頭で考えた。
微かに感じた違和感に、軽く腕を持ち上げる。
白い包帯の巻かれた腕が、視界に入った。
「―大丈夫?」
不意にした声に、その方向を見る。
「…傷、痛くない?」
言いながら、すぐ隣にしゃがみ込む。
「…紋さんが、やってくれたのですか?」
「うん、見つけたの僕だし。」
そうですか
呟いて、薄く笑う。
「…これはさ、そーゆうことに使っちゃダメだよ。」
傍らのテーブルに置かれた銀色のナイフと、包帯の巻かれた腕を交互に指差して言う。
「…すみません。」
言うと、紋さんが一つため息をつく。
「…それを、怒っているのですか?」
「違うよ。」
即答して、紋さんがこっちをまっすぐに見据えてくる。
「勝手に死のうとしたことに怒ってるんだよ。」
いつもの子どもっぽい表情は消えて、強い瞳をしていた。
「…すみません。」
ただ、謝る言葉しか出てこなかった。
小さく、傷が痛んだ。 「君は僕のモノなんだから、勝手に死ぬのなんか許さないんだからね。」
言って、紋さんがまっすぐに見据えてくる。
強くて、綺麗な瞳だった。
「…では、一つお願いがあります。」
「何?」
不思議そうな顔で、紋さんが聞き返してくる。
「―私が死ぬときは、あなたが殺してください。」
まっすぐに目を見て言う。
紋さんは、少し驚いたような表情をして。
けれどすぐに、笑った。
「…いいよ。君が死んでいいのは、僕が殺すときだけね。」
クスクスと、楽しそうに笑う。
いつもの、子どもっぽい笑み。
それに、酷く安堵した。
「…じゃあ、僕行くね。」
「はい、ご迷惑おかけしました。」
「ううん、早く治ってね。」
バイバイ、と手を振る紋さんに軽く微笑み返して。
パタンと閉まったドアを、しばらくぼんやりと見ていた。
左腕を見ると、傷の長さの分なのだろう、手首から肘にかけてが白い布に覆われていた。
「―…どうして、私が生きているんでしょうね…。」
誰にともなく呟いて、手を強く握った。
少しだけ、傷が痛んだ。
…うわぁい、過去話楽しいなぁ★(笑) これもケータイでカタカタと。 (2005/8/22) |