然 のワ ル ツ
 
 
 

目を開けたら、知らない世界だった。

目の前が赤く染まっていて、身体が焼けるように熱くて。
でも、そんなことどうだってよかった。

目の前のモノから、目が逸らせなかった。







――― ねぇ、この傷どうしたの?」



紅い唇が囁いて、細い指先が肌に触れる。
ちょうど胸の真ん中の、切りつけられたように引きつった皮膚。
腕についた切り傷とかより幾分古く、ソコだけ色が変わっている。

もう、痛みなんて感じない。



「あぁ…前に切られた。」
「嘘、ホントに?」
「ウソ。」
軽く笑って言うと、なんだと笑い声が漏れた。


「本気にしちゃった。朱けっこうトロいから。」
「失礼だな、そんなこと…あるかもしれないけど。」
呟くと、また楽しそうに笑った。


「ホントは、どうしたの?」
「うん?交通事故。」
「あぁ…。」
少しだけ悲しそうな顔をして、少し俯く。
それを見て、ふっと笑った。


「栞、そんな顔すんなよ。」
「そうね、ゴメンね。」
栞の言葉に、軽く首を振る。



―― 謝ることなんか、何もない。」


言って、軽く微笑む。

途中だったシャツを着て、ボタンを留めた。





――― 朱、今日も帰らないの?」

優しい声に、少しだけ考える。


「あー…ジャマ?」
「ううん、そうじゃなくて。紋さんとか心配するでしょ。」
「いや別に。放任だしウチ。」
「そう。慧、は?」
「うん…大丈夫。」
そう、と栞が笑う。


―― あたしは、朱がいてくれて嬉しい。」

何の臆面もなく笑うから、こっちが気恥ずかしくて。
でも少し複雑な気持ちになって、うまく笑えなかった。


「朱?どうしたの?」
「…イヤな夢、見るんだよね。」
まっすぐな目を見れなくて、少し俯く。


「父さんと母さんが、目の前で死ぬ夢。ずっと、同じ繰り返し。」

言いながら、軽く目を閉じる。
赤い赤い、記憶。


―― 何度も何度も、死んでいくんだ。2人とも、俺の目の前で。」

身体の痛みも、心の痛みも、何も感じなかった。
ただ、赤い赤い色だけが、焼き付く。




不意に、頬に冷たさが触れた。
目を開けてみると、柔らかな指が、頬に触れていた。



――― 自分を責めないで、朱。あなたのせいじゃない。」

言って、栞が小さく首を振った。
その顔が今にも泣き出しそうで、見ていたくなかった。

細い腕を取って、自分よりも小さくて細い体を抱き寄せた。



――― ごめん。栞、ごめん。」


言いながら、少し腕に力を込める。

辛いのは、俺だけじゃないのに。
栞だって、同じなのに。

栞は何も言わずに、俺の背中に手を回して。
優しく優しく、包み込むように抱いてくれる。

その優しさと暖かさに、酷く安堵する。






栞と俺は、よく似ていた。

幼い頃に両親を事故で亡くしていること。
その2人とも、自分の目の前で死んでいったこと。

その自分たちが、人殺しの世界にいること。

ソレが当たり前のことのように引かれ合って、俺達は共にする時間が多くなった。


特別な感情、好きとか、そういった類ではなくて。
ずっと昔から一緒にいるみたいな、心の奥の深いところを共有している感じ。

だから、栞といるのは楽だった。


恋愛とか恋人とか、そんなキレイな関係じゃない。
ただ、相手の闇を自分の闇で隠しているような、そんな醜い関係。

キスをしていてもカラダを重ねていても、ソコに恋とか愛とかキレイなモノはなかった。
ただ傷を舐め合うだけの、そんな関係なのかもしれない。


ただお互いに、お互いの存在が苦ではないとゆうだけのこと。
きっと、お互いの存在に依存しているだけ。

どうしようもないことぐらいわかっていて。
だけどどちらからも手を離せないでいるだけ。


できることならもう少し、あと少しだけ。
この優しさに甘えていたいと願ってしまう。

きっともうすぐ、全部が壊れてしまうような気がするから。



 

 
…あら主人公久し振り★
栞ちゃんは16ぐらいがいい。年下萌え(何 
彼女はなBUGの子です。話がこじれていきそうですネ(笑)
ちょーーーっとずつ話進めてます(亀の歩み並
 
 
(2007/9/26)