蝶の見る夢
ひらひらと蝶が舞う
周りを騙して、美しく舞う
「−…じゃあ、気をつけて…元気でね、昂。」
少し寂しそうな目で紋が言う。
「…ええ。紋さんも、お元気で。」
少し大きめな荷物を担いで、昂が答える。
「−さようなら…。」
「−…バイバイ。」
お互いに軽く微笑んで、昂が立ち去る。
残された紋は、昂の姿が見えなくなるまでそこに佇んでいた。
「−なぁ、慧。昂さん見なかった?」
「あれ、朱知らねーの?」
「何を?」
不思議そうな目で、朱が慧を見る。
「昂さん諜報でいねーぜ。」
「ちょーほー…?」
首を傾げながら、朱が呟く。
「諜報活動ー。いわゆる、スパイってヤツ。」
「スパイって…他の組織のトコ行ったってコト?」
「そ。」
「ふーんそんなのあったんだ。え、じゃあしばらく帰ってこねーの?」
「…朱、ホントに何も知らねーんだ…?」
少し深刻そうな顔の慧に、朱は小さく頷く。
「…スパイってのは…他の組織に潜り込む。つまり疑われちゃいけない。」
「うん、それくらいは知ってる。常識だろ。」
「スパイに行ったら、死ぬまで…死んでも帰ってはこれないんだぜ?」
「…え?」
慧の言葉が理解できなくて、朱は聞き返す。
「…正体を隠したまま、一生を終えるんだ。」
「…そん、なの…。」
後に言葉が続かなくて、朱は黙り込む。
慧は、それを複雑な表情で見ていた。
「…俺、紋のトコ行ってくる。」
「…紋だって、それを承知で行かせてるんだぜ?」
「わかってるけど…話だけしてくるよ。」
軽く微笑んで、朱がそう言う。
「…そっか、行ってらっしゃい。」
「ん…。」
同じように微笑む慧を後にして、朱は紋の元へと向かった。
「−…紋、いる…?」
コンコンとノックをして、朱が中へ声をかける。
「朱ー?ちょっと待ってね。」
中から返事があって、少しばたばたと音がしてからドアが開く。
「いらっしゃい。どうしたの?」
「…ちょっと、話あって…。」
「そう。中、入る?」
どうぞ、と言われて、朱は紋の部屋へと入る。
「ハイ、ココアでよかった?」
「あ、うん。ありがと…。」
「で、話って何なの?」
そう言っていつも通りに笑う。
「…。」
黙っている朱を不思議そうに見ながら、紋はカップを傾ける。
「−…タバコ。」
「ん?」
小さな呟きに、紋が聞き返す。
「紋、タバコ吸ってた?」
銀色の灰皿に押しつぶされた真新しいタバコを見て、朱が問う。
「あ、うん。朱が来たから慌てて消したけど。」
紋が笑ってそう答える。
「珍しいな。滅多に吸わないじゃん。」
「まぁそんな気分の時もあるんだよ。」
軽く笑って紋が答えて、カップを置く。
「で、何なの?何か言いたそうな顔してるけど。」
ふわりと微笑んで、紋が問う。
「…昂さんの、コト…。」
「あぁ…聞いた…?」
「…スパイって…。」
「…そ、昂は1番の適任だから。」
俯く朱に、紋は軽く微笑む。
「だって…スパイってもう帰ってこれないんだろ…?」
「朱…?」
「死ぬまであっちにいて…そんなの、昂さんかわいそうじゃん…。」
そんなコトを言ったって、どうにもならない
わかっていながら、朱は呟きながら少し俯いた。
「−…待って、朱。その話、誰に聞いた?」
その言葉に、朱が顔を上げる。
「え…慧、だけど…?」
「あー、慧かぁ…。」
そう言って、紋は苦笑する。
「え、何?」
全く意味がわからなくて、朱が言う。
「あのね、朱。確かに世間一般でいう諜報活動はそう言うものなんだけど。」
「けど?」
朱が軽く首を傾げる。
「あのね、うちで言う諜報活動ってのはー…。」
言ってる途中で、紋がクスクスと笑う。
「な、なんだよ。」
「えっとー、簡単に言うと、『ちょっとスパイのフリして入り込んで、潰してこい』ってコトなの。」
「…は?」
「たぶん朱は慧にからかわれただけだよ?慧はもちろん知ってるし。」
言いながら、紋はクスクスと笑いが止まらない。
「…マジかよ…。」
「マジだよ。」
それを聞いて、朱が一気に脱力する。
「あーもう、何それ。心配して損した。」
「昂は心配しなくても大丈夫だよ。」
「や、昂さんもなんだけど、紋の。」
「僕?」
不思議そうな目で紋が朱に聞く。
「だって紋と昂さん仲いいじゃん。いくら仕事とは言え紋も辛いだろうなーって。」
「…心配、してくれたんだ…。」
「一応…。滅多に吸わないタバコも吸ってるし、けっこう辛いのかなって…。」
「そりゃあねぇー…。最初は普通に過ごさなきゃいけないから最低1ヶ月は帰ってこれないし。」
「…寂しい?」
その問いに紋は軽く笑う。
「だってさぁ、周りはみんな仲良しさんばっかだから、昂がいないと僕話し相手いないんだもん。」
「あぁ…確かに。」
「そこで肯定しないでよ、朱。淋しくなるでしょ。」
言って、クスクスと2人で笑う。
「あー、慧に文句言ってこよ。」
「あ、慧にはー…ううん、いいや。なんでもない。」
何かを言いかけて、だけど紋がニッコリ笑うから、朱は何も聞かなかった。
「−おかえり、朱。ちゃんと真相聞いてきた?」
軽く意地悪そうに笑って慧が言う。
「ばっちり聞いてきた。なんで最初からホントのコト教えてくれねーんだよー。」
「や、俺が言ったのは普通のコト。ここのが特殊なだけなんだって。」
「あー、紋もそんなコト言ってた。」
「だろー?」
クスクスと笑って慧が言う。
「でもさー、そしたら普通のトコのスパイってかわいそうだよな。」
「…そう、だな。」
「もう自分のトコ帰れないなんてさー。俺はやだなー。あ、うちは大丈夫か。」
笑って、朱が言う。
「−…スパイに入ってさー、もしそこがすごい居心地よくて、そしたらどうすんだろうなー?」
「…慧?」
「ううん、なんでもねー。ちょっと思っただけだから、気にしなくていーよ。」
そう言って、慧はすぐにいつも通りの笑顔になる。
「…知り合いにスパイやってる人でもいんの…?」
朱のその問いに、慧は驚いたような顔をする。
「…まぁ、そんなトコ。うまくやってりゃいいなーなんて。」
軽く笑って、慧が答える。
「そっか。…俺は、どうしよ。」
「さっきの話?」
「うん。…あー、でも、俺ここ以外わかんねーけどさ。ここよりいいトコってないと思う。」
「…うん、確かに。もう別のトコ行けねーよなぁ〜。」
言って、2人でクスクスと笑う。
一度蜜の味を知ったなら
もう、そこから離れられない
それが罪だと わかってはいるけれど
また突発的に打ったモノ(笑)
ここじゃこれが普通なのです。なんせ紋が法律ですので(え)
昂が1番適任なのは、いっつもニコニコしてるから。
それは紋もなのですが、さすがにトップがいなくなるわけにはいかんでしょう(笑)
昂の話もちゃんと書きたいです、そのうち。
さて、また慧を微妙な存在にしてしまいました。
慧にもいろいろあるのです。前の組織でもいろいろあったのでは?(他人事?)
そのうちちゃんと語ります、ハイ…(こればっかだよ
題名なんで蝶かって言うと、「諜報活動」の響きからとか(爆) |