シ ノ ニ ム
コンコン、と扉を叩く音に、くわえていたタバコを灰皿に置く。
朝っぱらから、と呟きながら、音のした方へと歩いて行く。
ガチャ、と扉を開けると、そこにあったのは珍しい姿。
「−玄、珍しいな。」
「尚から届けもん。」
言って、少し大きな紙袋を手渡される。
中を覗き込むと、入っていたのは2丁の黒い銃。
それと、弾を収めたいくつかの小さな箱。
「何、パシられてんの?」
「アイツ、こんなん置いて行きやがった。」
ペラっとした紙を受け取って、そこに書かれている簡潔な文章を目で追う。
『これ、凜のとこに届けといてー。よっろしく〜♪』
「…お疲れ…。」
静かに呟きながら、軽く笑う。
「茶ぐらいなら出せるけど、上がってくか?」
「あー…。」
「どーせヒマなんだろ?」
言うと、まぁな、と言って玄が靴を脱ぐ。
「適当に座っていいから。」
言いながら、紙袋を床に置く。
「−桜は?」
「まだ寝てる。」
「寝る子は育つってか。」
「全然育たねぇけどな。」
軽く笑いながら、玄の前にグラスに入ったお茶を置く。
「今さらだけど、学校行かなくていいのかよ。」
吸いかけのタバコをくわえて問う。
「本日休講。」
「マジメに行ってんだ?」
「一応な。マジメには受けてねーけど。」
玄の言葉に、意味ねーよ、とクスクス笑う。
「−…おまえ、笑うようになったよな。」
「は?何だよ、突然。」
唐突な言葉に、軽く首を傾げる。
「昔は、全然笑わなかったろ。」
「そうだっけか?」
頷きながら、玄がタバコに火を点ける。
「初めて見たとき、愛想ねぇガキだと思ったしな。」
「マジかよ。」
言って、クスクスと笑う。
「−桜、来てから特にそうだよな。」
「そうか?」
「なんつーかなぁ…。」
軽く考えるようにして、玄が言葉を切る。
「桜といる時が、一番いい顔してるぜ、おまえ。」
その言葉に、そーかねぇ、呟く。
でも、と玄が続ける。
「−アイツといる時が、一番苦しそうにしてる。」
静かに呟いて、玄がゆっくりと煙を吐く。
その言葉に、何も言わずにタバコをくわえた。
沈黙の中、グラスの中の氷がカラン、と音を立てた。
「−…おまえは、いつだって苦しそうだけどな。」
吐き捨てるように言って、まだ充分に長いタバコを灰皿に押し付ける。
「…まだ、ひきずってんのか?」
「…かもな。」
短く吐き捨てながら、玄が同じようにタバコを押し潰す。
「…ま、俺も人のコト言えねーけどよ。」
「だな。」
簡潔な玄の言葉に、軽く笑う。
「つーか、むしろおまえの方が愛想ねーだろ。」
「確かにな。」
あっさりと吐かれた言葉に、クスクスと笑う。
カタン、と微かな物音がして振り返る。
ドアの所に、桜が遠慮がちに立っていた。
「−起きたか?」
軽く笑いかけると、その場で小さく頷く。
いつもはまっすぐに来るけれど…。
「−桜。」
唐突に響いた声に、少し驚きながらその声の主を見る。
「こっち、来いよ。大丈夫だから。」
「……。」
玄の言葉に、桜はその場に立ったまま動こうとしない。
「−何も、恐いことなんかしねぇから。」
ふわりと笑って吐かれた、優しい言葉。
普段、滅多に笑わないから、それはとても珍しいものだった。
「……。」
充分な時間考えたあと、少し躊躇いながらゆっくりと歩いて来る。 隣までやってきた桜に、玄がゆっくりと手を伸ばす。
微かに身をすくませながら、桜は黙っていた。
「−…恐く、ねぇだろ?」
軽く微笑みながら、玄が桜の頭をゆっくりと優しく撫でる。
その問いに、桜はゆっくりと小さく頷く。
「−さて、そろそろ帰るわ。」
言って、玄が立ち上がる。
「もう帰んのか?」
「出掛ける用事あるしな。」
「そ。尚によろしくな。」
「ん。」
答えながら、玄がトントン、と靴を履く。
「−またな、桜。」
言って、後ろに立っていた桜の頭をくしゃっと撫でる。
じゃな、と言う玄に、軽く手を上げて見送る。
「−…今の、玄な。」
「…げ、ん…?」
ゆっくりと確かめるように呟かれた言葉に、そ、と答える。
「…玄は、平気か?」
その問いに、桜は少し考えたあと小さく頷いた。
それに対して、そうか、と小さく笑う。
他人に触れることはおろか、触れられることに慣れていないから。
嫌い、というよりは、怖がっている。
だから、桜が黙って玄の手を受け入れたことに、少し驚いた。
「−……おなじ、だから…。」
唐突な言葉に、その声の主を見る。
「……いつ、も…苦し、そう…。」
「…誰と?」
静かに呟かれた言葉に、同じように静かに問う。
それに対して、しばらく考えたあと桜が首を傾げた。
自分の言った言葉の意味すらわかってなさそうな様子で。
なんだかなー、と小さく呟いて、小さく笑いながらその頭を軽く撫でる。
苦しそうなのは、自分か、俺か。
ペースメーカーの続きっぽいモノ。これ載せたくてあれやったという話(笑)
桜もいい加減、凛以外と交流(?)させなくちゃと思って。
えー、結局ガーナですね、ハイ(笑)
あと、玄を出したかったのですよ。あまりというか、全く出てないから(笑)
彼はとても無愛想ですよ。組織の中じゃあ、桜の次に笑いません(笑)
でも優しいです。愛想ないけど、冷たい人間なわけじゃないです。
凛が笑うキャラになってて自分でウケてました(笑)
2人がひきずってるモノに関しても、あとあと書きたいなぁと思います。
とりあえず玄の昔話が書けない書けない…(遠い目) 「シノニム」っていうのは、同義語とか類義語とかいう意味。
「同じ」って意味で使ってしまいました(笑)
(2004/12/29) |