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理 由
 
 
 
「-…なぁ、尚って紋のこと嫌いなの?」
 
 
 
唐突な問いに、思わず動かしていた手を止める。
その声の主は、不思議そうな顔をしてこっちを見ていた。
 
 
「や、嫌いと言うかー、好きじゃない、かな。」
「や、一緒じゃん。」
「いやいや、微妙なニュアンスの違いがあるっしょ。」
言って、軽く笑いかける。
 
 
「例えばさ、朱の嫌いな食べ物と、好きじゃない食べ物があるとするじゃん。」
「うん。」
「嫌いな物は食べたくないけどさ、好きじゃない物はなんとか食えるっしょ。」
「あ、確かに。なるほどねー。」
納得したような顔の朱に、だろ?と軽く笑う。
 
 
 
「うん、それはわかったけどさ。なんで、好きじゃねぇの?」
笑ったまま、朱が聞いてきた。
それに対して、軽く首を傾げる。
 
 
 
「んー…朱は好きか?」
「えっとー…嫌いじゃない。」
「曖昧だこと。」
言って、クスクスと笑う。
 
 
「んー、だってさ、何て言うか…時々、恐いんだよね。」
小さな声で、朱が呟く。
 
 
「いつもは優しいんだけどさ。なんとなく、恐いって思う時が、ある…。」
なんとなくなんだけどな、と言って、朱が小さく笑う。
 
 
「あー…マリアちゃん入るとなー、優しいけど恐ぇもんな。」
「ん、そんな感じ。」
軽く笑う朱に、同じように笑いかける。
 
 
 
 
「-…俺の通り名、知ってっか?」
「ペースメーカー?」
朱の言葉に、そうそう、と笑う。
 
 
 
「前から思ってたんだけどさ、ペースメーカーって、あの、心臓につけるあれ?」
「そ、それから取った名前ー。」
言って、軽く笑う。
 
 
「元々な、ペースメーカーって組織があって、俺そこのリーダーだったんだわ。」
「え、そうなんだ?初耳ー。」
少し驚いたような顔で朱が聞き返してくる。
 
「殺し屋の組織じゃなくてさ、ナイフとか銃とか、そーゆうのの専門組織だったんだけどな。」
「へぇ、そーゆうのもあるんだ。」
「けっこうあるぜー。」
言って、クスクスと笑う。
 
 
「クスリ専門のとことかもあるしな。」
「え、じゃあ篠とか玄も元々そっち系?」
「うんにゃ、篠も玄もめちゃ一般人。」
言って、笑う。
まぁ、あれを一般人と言っていいのならの話だけど。
 
 
「へー、世の中色んな一般人がいるなー。」
朱の言葉に、確かに、とクスクス笑う。
 
 
「んでー、まぁ組織名からそのまま通り名もらってたりとかして。」
「あ、慧と一緒?」
「そうそう。そーゆう単純なのばっかだぜ。」
言って、軽く笑う。
 
 
「で、もう…1年になるかな?結局そこ潰れてー。」
「潰れたん?」
「んー、まぁ正確に言うと、潰された。」
え、という朱の言葉に、あはは、と笑う。
 
 
「まぁ、言っちゃえば、潰したのがアイツ。」
紋?という言葉に、軽く頷く。
 
 
 
「だから、嫌いなん…?」
 
小さく呟くような声に、ふっ、と笑う。
 
 
「だからー、嫌いなんじゃないって。」
言いながら、くしゃくしゃと朱の頭を撫でる。
 
 
 
「…なんつーかなぁ、やり方が気にくわないんだよな。馬が合わないんだよ、アイツとは。」
 
ため息と一緒に、言葉を吐き出す。
 
 
「…合ってんのは昴さんぐらいだと思う。」
「そりゃそうだな。」
言って、ケラケラと笑う。
朱も、笑っていた。
 
 
 
「え、それから尚はここに入ったの?」
「そうそう。マリア様は可哀相な青年を哀れに思って引き取ってくれたのでした、と。」
俺の言葉に、朱がなんだそれ、と笑う。
 
 
「…つーか、元からそのつもりだったみたいだけどな。」
「え、そうなん?」
「でなきゃ、何の為に潰すって。ここにも売ってたし、損するだけだろ。」
「あ、そっか、なるほど…。」
納得したような顔で、朱が頷く。
 
 
 
「-好きじゃない理由、わかった?」
「んー…なんとなーく。」
「だろうな。」
意地悪っぽく笑いながら、言う。
 
 
「上手く説明はできねーんだよな。言葉足りねぇから。」
言って、クスクスと笑う。
 
 
 
「-あと、俺に話せるようなことじゃない、だろ?」
 
言って、朱が軽く笑う。
 
 
 
「-…まぁ、そーゆうこった。」
 
それに対して、同じように笑って返す。
 
 
 
「うわー、そうハッキリ言われるとショック。」
クスクスと笑う朱に、悪い悪い、と同じように笑う。
 
 
「玄とか篠には話せることなんだろ?」
「んー…。」
朱の言葉に、軽く笑いながら考える。
 
 
 
「…篠には話せるんだけどなー…玄は、ムリだわ。」
「え、なんで?」
朱の言葉に、軽く笑う。
 
 
「俺とか篠はけっこう吹っ切れてんだけどさ…玄は、まだちょっと、な…。」
軽く笑いながら言って、軽く俯く。
朱は、何も言わなかった。
 
 
「-ま、そんな感じだな。辛気臭いからこの話はお開きってことで。」
言って、軽く笑う。
 
了解、と朱も笑った。
 
 
 
「-ん、これオッケー。あんま壊すなよ?」
「ん、頑張る。」
クスクスと笑う朱に、ナイフを手渡す。
 
 
 
「-んじゃあ、お邪魔しました。」
「ん、もう帰んの?」
「うん、もうすぐ慧帰ってくるし。」
笑う朱に、なるほどね、と笑う。
 
新妻みてぇ、って言葉は、言わないでおいた。
 
 
 
「-んじゃ、気をつけて帰れよ。」
「ん、今日はサンキュ。」
バイバイ、と手を振る朱に、軽く手を振る。
 
パタン、とドアが閉まったのを見て、ゆっくりと手を下ろした。
 
 
 
 
「-…もう、1年以上経つんだな…アヤ。」
 
 
ぼんやりと、小さく呟いた。
 
 

 

   
尚が紋のこと好きじゃない理由を明かそうと思ったのですが、不発に終わりました(爆)
なんていうか、語るにはまだ要素が足りなかった…(何
まぁなんとなーく経緯を説明してみました★
尚のいた組織を紋が潰して、そっから尚を引き抜いたような感じで。
けっこうすごい人なんですよ、実は。って、前もどっかで言った気がする(笑)
 
ちなみに、篠が引きずってるのは妹のことで、玄が引きずってんのは零のことです。
色々明かしたいコトはいっぱいいっぱいなのですが、なかなか…。
もう、読んでる人意味わからなくなってると思う…ごめんなさい(笑)
 
 
 
 
(2005/3/20)