ペ ル ソ ナ の 瞳
耳から消えない言葉がある。 目に焼き付いて消えない映像がある。 それらはいつまで、俺の中にいるのだろう。 いつまで、俺は憶えていられるのだろう。 「―――― 久し振り。」 薄く笑って吐かれた言葉に、吐き気がした。 「……久し振り、ね。よく顔見せれたもんだな。」 「今日は私用。仕事じゃないよ。」 そーかよ、と呟いてタバコを踏みつけた。 篠がポイ捨てすんなとか言ってたっけか。どうでもいいけど。 「薫、だっけ?今さら何の用。」 「うーん、キミ、玄だっけ?俺のこと相当嫌いそうだね。」 だったら何だと思いながら、新しいタバコに火を点けた。 「珍しいね。あんまり感情見せないんでしょ?」 「おまえに関係ねぇよ。」 可笑しそうに笑うそいつに酷く苛立って。 だけどそれよりも、ココから逃げ出したい衝動に駆られている自分に苛立った。 「―― 今日はね、キミにお願いがあって来たんだ。」 呟きながら、ゆっくりとタバコに火を点ける。 酷く大人びて見えるのは、スーツのせいだろうか。 きっと、雰囲気そのもののせいなのだろう。 「コレ、ちょうだい。零の。」 まっすぐに伸ばされた指が首筋に触れて。 チャリ、と小さなクサリの音がした。 「…今さら。」 「だって、何も残ってないんだ。零のモノ、俺は何にも持ってない。」 「だから何だって。」 呟いて、煙を吐いた。 少しだけ、目の前の顔が歪む。 「――― 零は、おまえが殺したんだろ。」 吐き捨てて、睨みつける。 一瞬だけ、悲しそうな目で微笑んだような気がした。 「…わかってるよ。わかってるから、お願いに来たんだ。」 言って、少しだけ俯いた表情が、少しだけ泣きそうなものに見えた。 「………無茶なお願いだよね。ゴメン、わかってはいるんだけどさ。」 言いながら、何かを手渡される。 受け取ったソレは、写真だった。 「…全部、捨てたと思ってたんだけど。1枚だけ、フィルムに残ってたんだ。」 ソコにあったのは、記憶の中に残っている笑顔の零だった。 「……アイツ、こんな顔して笑うんだな。」 俺に見せる笑顔とは少し違うモノ。 それはまぁ、当たり前なんだけど。 「見てたらなんかどうしようもなくなってきてさ、思わず飛び出してきちゃった。」 子供みたいに困った顔して笑うから。 思わず少しだけ、微笑んだ。 「…アンタ、零のこと本当に好きだったんだな。」 「うん…。」 本当に、優しい顔で笑うから。 なんだか見ていられなくてため息をついた。 「――――― ん。」 手を伸ばした先には目を丸くした薫がいて。 可笑しくて思わず笑った。 「―― おまえには必要なんだろ。俺は、自分のあるから。」 遠慮がちに伸ばされる手。 一瞬だけ触れた指先が、酷く冷たかった。 細い十字架に彫られた、ココにはもういない人の名前。 ソレを、ゆっくりと指先で撫でて。 両手で優しく、本当に愛おしそうに包み込む。 その姿を見ながら、こいつだって殺したくなんかなかったんだろうなと思った。 殺したくて殺してるヤツなんかいないって、わかってはいるつもりだったのに。 「―――― ありがとう。玄、ありがとう。」 言って微笑むその顔は、本当に優しいもので。 同じように、軽く笑った。 「その写真、玄が持ってて。写真とか、ないでしょ。零は撮られるの嫌いだったから。」 「レアだな。」 言うと、薫がクスクスと笑った。 「今日、来てよかった。玄と話せてよかった。ありがとう。」 「俺も、ずっと誤解してたわ、おまえのこと。」 「まぁ、しょうがないよね。俺が殺したことには変わりないんだし。」 「まぁな。」 言いながら、タバコに火を点ける。 「どうでもいいけどおまえ、前と随分感じ違うな。」 「あー、俺仕事のときって性格変わるから。」 そんなもんかね、と呟いて煙を吐く。 「俺、弱いからさ。仮面被らないとダメなんだよね。」 言って、薫が薄く笑う。 きっとコイツも、どっか壊れてんだろうなと、ぼんやり思った。 「――― じゃあまた。次会うときはどっちかわかんないけど。」 笑って軽く手を振る姿が雑踏に消えて。 ゆっくりと煙吐き出してから、タバコを踵で潰した。 手に持っていた写真を少しだけ眺めてから、空を見上げてみた。 嘘くさいくらいの青空が、広がっていた。 少しだけお話進めてみたようなそうでもないような…。
CrimsonとBUGは接点が多すぎです。つっこんじゃダメです(ぇ 薫と零は当時付き合ってましたー。 でも薫が仕事で零を殺しましたー。ってのを言いたかった話。伝わってんのか…?(汗 玄ちゃんは自分の十字架ネックレスちゃんと持ってますヨ。なくしてなきゃ(笑) (2007/10/17) |