ま ど ろ み
 
  ときどき
  とても、恐くなる

  自分が
  自分じゃなくなってしまいそうな感覚

  赤い赤いまどろみの中に
  溶けていってしまいそうな 感覚
 
 
 
「−…朱?」

唐突にかけられた声に振り向く。
そこに立っていたのは、見知った姿。
 


「−慧…。」
「偶然だなー。…仕事か?」
俺の足下に転がったモノを見て、慧が問う。
それに対して俺は黙ったまま頷く。
 


「…で、帰らねぇの?」
「…帰る、けど…。」
少しだけ俯いて、話す。

「…朱、なんかあったか…?」
気付いたら、目の前に心配そうな慧の顔があって。
 


「−…慧…。」
「ん?」
名前を呼ぶと、目の前で慧がふわりと笑う。

とても、甘く優しい笑み。
 


「…この先、たくさん人殺してってさ…いつか、それが楽しくなっちゃったり、とか、すんのかな…?」
「朱…?」
「なんか…慣れてく、のが、恐いんだ…。」
言った途端、頬を何かが流れる。
 
赤く、染まった涙。


手の甲でそれを拭って俯く。
ふわっと、何かに包まれた感覚がした。

 

「−…大丈夫だよ。朱は、そんなコトになったりしねーよ。」
優しく、ゆっくりと慧が言葉を紡ぐ。


「朱は、ちゃんと人の痛みを知ってる。だから、楽しくなったりとか、絶対しない。」
優しく、諭すように呟かれた言葉。
優しい優しい、許しの言葉。


俺はずるい。
慧がそう言うコトはわかっているのに。

なのに、わざとそう言うんだ。
慧が否定してくれるのが、わかっているから。

俺はずるい。いつだって。
 
 
  ときどき とても恐くなる
  自分という存在が
  赤い赤いまどろみに溶けてしまいそうな 感覚
  
  そこに確かに在る、君という存在

  決して許されるコトではないのに
  ここにいたいと願ってしまうのは 罪だろうか
 
 
 

  
きっと仕事初めてすぐのあたりじゃないかと思われ(適当)
とっても不安になったりしたんだよ、朱が。
そんな朱に、慧はとても優しいのです。っていうか、基本朱に優しいのです(笑)