覚 悟
明るい、満月の晩だった。
仕事が終わってから、待ち合わせの場所まで歩いて行った。
相手はもうそこに座っていて。
キレイな金髪が、月の灯りに光っていた。
「―…
その姿に、声をかける。
「−よぉ、朱。仕事頑張ってるか?」
振り向いて、黄が軽く笑う。
「まぁまぁ。」
応えながら、隣に腰掛ける。 黄は、3コ上のけっこう先輩。 目がすごくいいとか聞いたけど、よくわからない。
「−で、話って何?」
わざわざ呼び出さなきゃいけないコトかよ、と内心思いながら問う。
「−…おまえ、慧を殺せ、って言われたら、できるか?」
唐突な問いに、思わず言葉に詰まる。
「―…んなの、できるわけねーじゃん。」
少し考えてから、呟く。
「殺らなきゃおまえが殺られる場合は?」
少し意地悪そうな笑みを浮かべて、聞いてくる。
「…慧を殺すくらいなら、俺は死ぬよ。」 「−逃げんのか?」 その言葉に、顔を上げる。
「−違う。」 「違わねーだろ。おまえは、自分が死ぬコトで逃げようとしてんだよ。」 黄の冷たい目が、俺を捕らえる。 圧倒されそうなくらい、強い目。
確かに、そうかもしれない。 けど−
「―…朱?」 不意に声のした方を見ると、そこには慧が立っていた。 「―と、黄。何やってんのー?」 「…おまえ、人のコトおまけみたく言うなよ。」 ため息と一緒に、黄が呟く。
「単に仕事の話。おまえこそ何やってんだよ。」 「んー、単なる通りすがり。」
言って、慧がニッコリと笑う。
俺は、何も言えなかった。
「−じゃあ、黄くん。俺ともちょっと仕事の話しようじゃないか。」 「…それはぜひお断りしたいな。」
「まぁまぁ、そう言わずに。ごめん朱。部屋、戻っててくれるか?」
「あ、うん。…じゃあ、黄またな。」 静かに呟いて、足早にその場から立ち去る。
振り返るコトは、できなかった。
「―…さて、何の話だかわかるよな?」 朱の姿が見えなくなってから、慧がニッコリと笑いながら言った。
「…怖いからその笑顔はやめろ…。」 「失礼なー。…ま、いーや。黄、おまえどーゆうつもりだ?」 「…何がだよ。」 軽く笑って、黄が言う。
「とぼけんな。なんで朱にあんなコト言った。」 鋭い目で、慧が黄を見る。
黄は、何も応えなかった。
「答えろ。」 その言葉に、黄が軽くため息をつく。
「…おまえこそ、何考えてんだ?最初からいたくせに。ご丁寧に気配まで消しやがって。」 その問いに、慧は何も答えなかった。
「答えろよ。」
ただまっすぐに、黄の目を見ていた。
どれぐらい、沈黙が続いたのだろう。 先に口を開いたのは、黄の方だった。
「…俺は、もっと自覚持てって言いたかったんだよ。俺たちに余計な感情はいらねぇからな。」 面倒臭そうに、ため息と一緒に吐き捨てる。
「…ふーん、なるほど、ね。黄って、意外と後輩思いなんだ。」 「うっせーよ。」 「でーも、朱は心配いらねーよ。」 「…なんで。」 黄の言葉に、慧が笑う。
「−アイツは、俺の親友だから。」 「…は?」 怪訝そうに眉をひそめる黄に、慧はヒラヒラと手を振る。
「そーゆうコトだから、じゃーな。オヤスミー。」
「え、オイ!?」 「あ、そーだ。」 帰ろうとした慧が、急に振り向く。 「気配消してたのによくわかったじゃん。成長したな。」 笑顔でそう言って、慧はその場を去る。 「…わかるように消してたくせに…。」 残された黄が、独り呟いた。 「ただいまー。朱ー?まだ起きてる?」
「おかえり、慧。…黄と、何話してたんだ?」 「ん?たいしたコトじゃねーよ。仕事のコト。」 言って、慧がと笑う。
そっか、と呟いて、朱が少し俯いた。
「−…なぁ、朱。」
その呟きに、朱が顔を上げる。
「−俺、もし朱を殺せって言われても、殺さないから。つか、殺せないから。」
その言葉に、朱が数回瞬きをする。
「…なん、で?」
不思議そうな朱に、慧が笑いかける。
「朱はー、俺の親友だから。親友殺るくらいなら、俺は自分で死ぬよ。」
「…うん、俺もだ…。」 しばらくの沈黙の後、2人して笑った。
それは、「逃げ」なんかじゃない 大切なヒトを守りたいという、「覚悟」
慧はすごいヤツなんです、実は。謎も多いけど(笑) この人たち、別に黄と仲悪いわけじゃないですから(笑) ただ、あたしの中で黄はちょっとやられキャラ(ひど 黄はカツミって読みます。そう読んであげてください(笑) |