不完全なガラクタ
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いつかきっと、全てを壊してしまう。 最初から、全部全部、自分が壊したんだから。 「――― おまえ、もういい加減帰れよ。」 吐き捨てられた言葉に、軽く顔を上げる。 「んー……まだ、いいや。」 言葉の代わりに、隠す気もない深いため息が落ちてくる。 「じゃあ俺帰るわ。カバン、置いとく。」 トン、と座ってる横にカバンが置かれる。 何にも入ってなんていない、カタチだけの入れ物。 「―― 隆也。」 振り向いて声をかけると、歩きだしていた影が振り向いた。 「― ありがと。」 短く言って、軽く手を振る。 隆也は何も言わずに、振り向いて歩き出しながら同じように手を振った。 「――――・・・ 帰らなきゃ、だよなぁ……。」 独り言を呟いて、その場に寝転がる。 傾いた陽が、空を紅く染め始めている。 グラウンドからは、どこか運動部の声が遠く聞こえた。 ポケットの中でバイブが鳴って。 無意識に通話ボタンを押してもしもーしと、やる気のない声を出した。 『――― 慧、元気?』 電子音の向こうで聞こえた声に、ゆっくりと目を開けた。 「――・・・・・・ 葵、久し振り。」 無意識に笑顔を作る自分を、不思議に思った。 『よかった、変わらなそうで。』 「うん。」 『薫がさ、元気だったって言ってたから心配はしてなかったけど。』 「うん。」 また目を閉じて、聞こえてくる声に耳を傾ける。 懐かしいとか、好きとか、嫌いとか。 何にも考えずに、その声を聴いていた。 『―――― …慧、ごめんね。』 予想していなかった言葉に、目を開ける。 ごめん、なんて、酷く久し振りに聞いた。 「―――――― うん。」 何も、いらなかった。 言葉なんてなくたって、通じるから。 だから、この言葉に意味なんてない。 俺らの間に、言葉なんて必要ないことを、とっくの昔から知っていた。 『じゃあまたね。また、連絡するよ。』 「うん。」 『あんまり、無理しないでね?』 「うん、わかった。おまえもな。」 『うん。じゃあね。』 言葉の裏に、懐かしい顔が浮かんだ。 「――― 葵。」 起き上がって、切れかけた電話に呼びかける。 ノイズ混じりに、不思議そうな葵の声が聞こえた。 「…電話、ありがと。」 『―・・・ うん。』 「声聞けて、よかった。じゃあな。」 バイバイとゆう言葉が耳に届いて、腕を下した。 無機質な電子音が、少し遠くで聞こえた。 ―――――もう、帰らなきゃ、な――――
呟いた言葉は、紅い闇に溶けた。 話を進めたくなったんだと思うヨ(笑)
主人公は誰ですか?と聞かれたら、自信満々に「朱です」って答えますが何か? (2007/9/19) |