和音




ゆっくりと、だけど確実に歯車は廻り
不協和音が、鳴り響く
 
 
 
 
 
「―…アンタが、マリア?」
 
 
呟かれた言葉に、軽く苦笑する。
 
「それ、けっこうもう知られてるの?」
その言葉に、まぁね、と短い答えが返ってくる。
 
 
 
「―じゃあさ、俺のこと殺してよ。」
 
静かに、けれどはっきり呟いて。
 
笑った。
 
 
哀しげに笑う、深くキレイな紫色の瞳から、目が逸らせなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
真っ暗な部屋で、ぼんやりとしていた。
 
 
黒い世界なら、赤い色も見えないから。
目を開けてても閉じてても、黒しか見えないから。
 
いっそこのまま、闇に溶けてしまいたかった。

 
 
静寂な暗闇の中、ゆっくりと目を開ける。
ゆっくりと手を動かして、黒い塊をこめかみに押し付けた。
 
静かな空間に、カチ、と無機質な音が響く。
 
こんな簡単に人は終われるんだなと思うと、不意に笑えてきた。
 

 
 
――― 死んでどうするの?」
 

唐突な声と同時に、部屋が明るくなる。
その明るさに、思わず目を細めた。

 
 
「―お帰り、慧。なんで僕の部屋にいるの?」
クスクスと笑う瞳に、軽く笑いかける。
 
 
「…悪ィ、紋。部屋のカギ、なくしちゃってさ。」
「で、マスターキーもらいに来たら開いてたって?」
「そう、カギぐらい閉めとけよ。」
言って、軽く笑う。
本当に笑えているのかどうかはわからないけれど。
 

 
「それで?」
「何が?」
「何、しようとしてたの?」
言いながら、トン、と手の中の黒い塊を指差す。
 
「…別に。」
呟いて、軽く顔を逸らす。
 

 
 
「―死にたく、なっちゃった?」
 
楽しそうな声に、その主を見る。
クスクスと笑う、楽しそうな姿があった。
 
 
「…おまえ、ムカつくわ。」
「あれ、嫌われちゃった?」
なおもクスクスと笑う声に、軽くため息をついた。
 
 
 
「とりあえず、これはこーゆうことに使うんじゃないの。」
「…人殺すために使え、ってか?」
「そ。」
返ってきた簡潔な答えに、思わず嘲笑が漏れる。

 
 
――― ホント、ムカつくな。」
 
生まれてからずっと、この世界にいるから。
だからきっと、そんなこと当たり前なんだろう。
 
わかってる。
 
 
 
「…慧、君だってこの世界長いんだから、もうわかってるでしょ?」
「…何。」
 
 
―――この世界は、こーゆう世界なんだよ―――
 
 
あっさりと吐かれたセリフに、思わず眉をひそめる。
そんなことわかり切ってる自分に、嫌気がさした。
 
 
 
「…まぁ、死にたいなら別に止めないけどね。」
 
言いながら、手の中から取られた銃が目の前に差し出される。
 
 
「でも、忘れないでね。」
その言葉に、紋を見上げる。
 

 
 
――― 君が死んでも、君があの子を殺した事実は変わらないし、消えないんだよ。」

 
 
静かに吐かれた言葉に、何も答えられなかった。
 

 
 
「―…かってるよ。」
 
消え入るように呟いて、立ち上がる。
すれ違いざまに銃を取って、玄関のドアへと急いだ。
 
吐き気がした。
早く、そこから消えたかった。
 
 
 
 
 
――― 慧」
 
 
名前を呼ばれて振り返って、反射的に投げられたモノを受け取る。
カチャ、とカギが手の中で音を立てた。
 
「合い鍵、3つ作っときな。」
「は?んないらねーし。」
紋の言葉に、眉をひそめて答える。
 
「1つは自分の。1つは予備。」
「…もう1個何だよ。」
その言葉に、紋がゆっくりと笑う。
 
 
 
「―すぐに、使うことになると思うよ。」
 
 
何でもわかってるかのような、余裕の笑みが苛ついて。
そのまま、乱暴にドアを開けて部屋を出た。
 
 
 
外はもう暗く、月が明るかった。
泣きたくなった。
 
 


 
 
 
 
バタン、と大きな音を立てて閉まったドアに、思わず笑みが零れる。
 
「若いなぁー。」
一人で呟いて、クスクスと笑う。
 
 
 
「―…なんでみんな、死のうとするんだろ…バカみたい。」
 
 
吐き捨てるように、呟いた。
 
 


 


とても久しぶりに書いた気がする。文章の書き方忘れた(笑)
一番最初の会話のあたりは、紋と慧が初めて会ったとき。
メイン(?)の文は、慧がCrimsonに入ってすぐのコト。
入って最初の仕事は家族なり友達なり、知ってる人を殺すこと。
慧はそれがけっこうこたえてるような感じで。
ちなみに合い鍵余分な1個は、後にやってくる朱の分です。

最近みんなの過去話ばっか書いてますかね?だんだん過去を明かしていくの楽しいです♪(笑)
でもね、問題が1つあるのですよ。
メンバーの過去話書いてるとね、主人公が出てこないのΣ(爆
…まぁいいか(早

(2005/8/8)