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ひ つ じ の
 

たとえばそう、もし「罪」とゆうモノが、目に見えるモノであるならば。
この身に背負ったソレは、どれほど大きくて、醜いモノなんだろう。

その罪が身体を押しつぶす程、息もできなくなる程大きくなる頃には。

そのとき、僕はまだ、泣けるのだろうか。





不意に足が縺れて、壁に肩を預ける。
呼吸は未だ調わずに、荒い息を繰り返す。


口元をてのひらで抑えつけて。
それなのに空気は漏れていくばかりで。

増していくのは、苦しさだけ。



端から見たら、泣いているようにでも見えるのかな。
涙なんて、これっぽっちも流れはしないのに。





――――― 紋。」



唐突な声に、肩が震える。
元から静かになど、してはくれていないけれど。


――― た、くちゃ…。」

上手く息ができなくて、言葉と共に空気が漏れる。
そうしたらもっと苦しくなって、思わずその場に座り込んだ。



―― 紋。」

もう1回名前を呼ばれて、だけど返事もできなくて。
ただただ、声を押し殺していた。


―――― っ!」

不意に腕を強い力で引っ張られて。
視線の先で、強い瞳と目が合って。
思わず目を逸らしたくなって、でもできなくて。
泣きたく、なった。



―― 落ち着け。大丈夫だから。ゆっくり、ゆっくり息吸え。」

いつの間にか大きな腕の中にいて。
大きな手のひらが、背中を優しく撫でていてくれた。

僕はまだ息がうまくできなくて。
目の前のスーツの端っこを、必死で掴んでた。

拓ちゃんが優しい声で大丈夫って、呪文のように繰り返してくれていて。
段々と、呼吸が落ち着いていくのがわかった。



――― 大丈夫か?」

静かな声に、小さく頷く。
ポン、と頭の上に優しく手が置かれた。


「……ごめんね、拓ちゃん。」
「何が?」
「なんか、迷惑かけて…。」
言葉の代わりに、大きなため息が漏れた。


「おまえ、かわいくねぇな。」

唐突なセリフに、目を丸くする。

「いきなりそんなこと言われても…。」
「ガキはガキらしい方がかわいいっつってんの。」
またひとつ、ため息が零れる。


「…わかんないよ。だって、僕は早く大人になりたいんだ。」
呟いて、俯く。
早く早く、大人にならなくちゃ。追いつけない。


――― 焦る必要なんかないだろ。嫌でも年なんか取るんだし。」

言いながら、拓ちゃんが立ち上がる。
シワ一つないスーツの上着の裾に、歪んだ跡があった。


「甘えられるのなんか、今だけなんだしよ。」
だから甘えとけよって、優しい言葉が降ってくる。
子ども扱い、される度に少しずつ苦しくなる。


「命でもいいし、命に甘えたくないんだったら俺でもいいから。」
言って、拓ちゃんが優しく笑った。


―― 俺の前では、無理して笑うな。見てる方が気分悪ィ。」

何でも見透かしているような、強い目。
僕の弱さを全部見抜いて暴くような、強くて優しい瞳。


不意に手を伸ばされて、拓ちゃんの指先が頬を掠める。
そのとき初めて、自分が泣いていることに気づいた。
僕の身体はまだ、涙を流す機能は働いていたらしい。



ありがとう

小さく呟いた言葉は空気に混ざって溶けて。

僕はまだ、生きていけるとぼんやり思った。


 

  
過呼吸おこした紋少年。10歳前ぐらい??
相変わらず拓は俺様です。
弱ってる子と俺様の話書くの好きだねあたしも(笑)
 
 
(2007/10/1)