臆病 な羊
―――死なせてよ―――
ありきたりなセリフに、あぁまたかと内心思った。 でもそれは言えないから、ただ黙っていた。 「― もうイヤだ。死なせて。殺して。もうやだ。」 自分の腕で自分を抱いて。 キツく、爪が食い込んでいて。 痛そう、とか、どうでもいいことを思った。 「――― 慧。」 ただ静かに、名前を呼んだ。 だけど、黙ったまま。 顔すら上げない。 「― 死にたいの?」 同じように、ありきたりなセリフを返した。 わかってはいたけれど、答えは何も返ってこない。 「―― 葵・・・・・・俺は、どうしたらいい?」 泣き出しそうな声で、慧が呟く。 「慧は、どうしたいの?」 言って、軽く微笑んだ。 一瞬だけ目が合って、だけどまた、俯いてしまった。 慧は、あんまり僕を見てはくれない。 あぁ、僕があんまり見てないのかな。 透き通るような、あの深い紫色の瞳が、大好きなのに。 「― 理由が欲しいなら、いくらでもあげる。」 静かに、ゆっくりと言葉を紡ぐ。 ゆっくりと顔が上げられて。 キレイな紫色と目が合った。 僕と慧はよく似ているのに、そのキレイな色は僕にはない。 だからきっと、とても好きなのだと思うのだろう。 「―― ねぇ、慧。だから死なないで。僕は、慧を殺したくない。」 言って、軽く笑う。 きっと慧が死ぬときは、僕が殺すときだから。 それ以外で死ぬなんて、許さないから。 「言ってる意味、わかる?」 少しの間があって、慧が小さく頷いた。 その姿がとても愛おしくて、柔らかい髪の毛を小さく撫でた。 「―― 死ぬときは、一緒に死んであげる。だから、勝手に死なないで。」 なんて自分勝手なんだろうと、自分でも思う。 だけど、今の慧には必要なコトバ。 慧には僕が必要で、僕には慧が必要だから。 だから、まだ死なれては困る。 僕はまだ死ねないから。 どうしてこんなにも、弱いのだろう。 身体を構成する物質は、何も変わらないはずなのに。 心、が違うから? 僕と慧は、同じようで決して同じではないのだ。 慧が僕に弱さを見せられても、僕は慧に弱さを見せられない。 どうして僕は、こんなにも臆病者なのだろう。 えー、前の話の葵視点バージョンです。
視点変えて書くの好きだねあたし(笑) 今回はあんまり葵がサイコさんじゃないね(ぇ (2007/8/27) |