ひ だ ま り
「―――ねぇ、篠。アンタ哉のこと好きでしょ。」
何の前触れもなく吐かれた唐突な言葉に、思わず飲んでいた紅茶に咳込む。
「…零さん、突然何の話ですか。」
「いーから、答えなさいよ。」
言って、ニッコリと零さんが微笑む。
有無を言わさないような、笑顔。
「…じゃあ、仮にそうだとして、何なんですか?」
「ん、別に?ただあたしが楽しいだけ。」
「それはそれは…。」
呆れた顔して笑うと、零さんがクスクスと笑う。
「―ま、ぶっちゃけちゃうとさ、あんま期待させないで欲しいんだわ。」
言いながら、零さんがカップを置く。
「あの子の傍にいないんだったら、ちゃんと突き放してあげて。」
強い瞳に、まっすぐに見据えられる。
それから、目が逸らせなかった。
「…零さんは、強いですね。」
軽く下を向いて視線を逸らして。軽く、笑う。
「・・・・・アンタらはさ、怖がり過ぎなのよ。」
言って、零さんが困ったように笑う。
「哉は捨てられてるから、誰かがいなくなるのが怖い。篠は大切な人を失くしてるから…。」
言いながら、零さんが軽く俯いた。
「…だから、どうせいなくなるなら、誰もいなくていいって思うんでしょ?」
不意に、藍華の顔が浮かんだ。
まだまだ小さくて、後ろを一生懸命についてきてた。
可愛くて、屈託のない笑顔。
「…大切な人がいなくなるのは、確かに怖いけど。でも、怖がってばかりいたらダメなのよ。」
ふわりと、暖かい手が触れる。
「―それで、何かを失うようじゃ、ダメよ。」
言って、目の前で優しく微笑む。
とてもとても暖かい、ひだまりのような笑顔。
「篠だって、哉だって、幸せになれるんだから。」
ね?と笑う零さんに、答える代わりに笑った。
「―――ありがとう、ございます。」
言うと、零さんが満足そうに笑った。
「―あ、お礼は紅茶のおかわりがいいな。」
「ハイハイ。」
クスクスと笑いながら、空のカップを受け取る。
ふわりと温かい空気に乗って、いい香が漂う。
「ま、言うならさっさと言ってきなよ。今のままじゃ、2人ともどっちつかずで辛いっしょ。」
ニッコリと笑う零さんに、何て答えればいいのやらと、何も言わずにとりあえず笑った。
この人は、どこまでわかってて言ってるんだろうか…。
ある意味、紋さんより恐いかも。
「…じゃあ、明日にでも哉ちゃんの好きな紅茶持って行きますよ。」
「ん、よろしいよろしい。」
零さんが笑って、同じようにクスクスと笑った。
ひだまりのような、笑顔。
とても、気持ちよくて。
少しだけ、寂しくなった。
…なんか最近過去話ばっかね(苦笑 最近なんだか零の出番が多いなぁ(笑)
(2005/10/4) |