始まりの日
思い出すのはあの日 雨が降っていた路地裏
「−大丈夫?」
突然の声で、自分のコトだと認識するのに少し時間がかかった。 「−君、何してるの?」 さしていた傘を、軽く向けられる。
冷たく肌を刺していた雨が、ポツポツという音に変わった。
「…別に。死ぬのを待ってる。」 「…死ぬの?」 「…生きてたってしょうがない。」 吐き捨てるように言って、目を閉じる。
「−…じゃあ、君の命僕にちょうだい?」 「…は?」 唐突に吐かれた言葉に、眉を顰める。
「だってどうせ死ぬんでしょ?だったらいらないんじゃない?」 言って、目の前に笑顔が広がる。
「−君、名前は?」 「…朱。」 優しい笑顔に誘われて、自然と口が開く。
「いい名前だね。僕は紋。おいで、朱。」 そう言って差し出された手はすごく優しくて、暖かかった。 「−朱、どうしたの?」
優しく微笑みながら、紋が問う。
それに対して、枕に顔を突っ伏したまま、何も答えなかった。
軽く、タバコの臭いがした。
「…朱、不満があるならちゃんと言って?」
「…。」
何も答えない俺に、紋は軽くため息をつく。
「−…紋ー。」
「ん?」
小さな呟きに、紋が微笑む。
「…やっぱ…銃って、やらなきゃダメなの?」
「絶対じゃないけど…銃はキライ?」
「……うん。」
銃は、恐い。嫌だ。
「−そうだね、じゃあ銃はやらなくていいよ。」
「−え。」
あまりにもあっさり言われて、少し驚く。
「その代わり、ナイフはちゃんとやってね。」
「うん、アリガト。…でもやらなくて大丈夫?」
「大丈夫だよ。別に絶対使わなきゃいけないってわけでもないから。」
そうなんだ、と呟いて、枕から顔を上げる。
「誰も文句とか言わないから。まぁ言わせないけどさ。」
「すげー自信じゃん。」
「んー?ここで僕に逆らえる人とかいないから。」
笑って吐かれた言葉に、軽く首を傾げる。
「あれ、言ってなかったっけ?僕ってNo.1なんだよ。」
軽く笑いながら、紋が言う。
「ちなみに、朱は一番の新米クンだから、No.13ね。」
その言葉が耳に届いた頃、ようやく言葉の意味を理解した。
「え…紋って、トップ?」
「うん、そう。」
ニッコリと笑って、紋が答える。
「もっと早く言えよ…。」
「え、ごめん。でも別に気にしなくていいよ。みんなけっこうタメ口だしね。」
言って、紋がクスクスと笑う。
「あ、ほら朱。早くナイフの訓練行きな?No.12の慧ってのが教えてくれるから。」
「あ、うん。地下室?」
俺の言葉に、紋がそ、と答える。
「−仲良く、してあげてね。」
背中から向けられた言葉に、振り返る。
その言葉に、軽く首を傾げて笑う。
その時は、意味がわからなかった。
「−ねぇ、朱ー。やっぱ銃やっとけばー?」
あれから半年、ときどき紋はこんなコトを言う。
「…イヤだよ…。てか紋仕事ないわけ?」
「もーつれないなぁ。そういえばさ、朱はなんで銃がキライなの?」
「…キライだから…。」
「それって理由になってないよ〜。」
言って、紋が笑う。
とても20歳とは思えないくらい、子どもっぽい笑顔。
「−ただいまー…って紋来てたん?」
「あ、お帰り、慧。」
後ろから聞こえた声に振り返って、笑う。
「やっほー慧。ヒマだったから朱と遊んでたの。もう帰るトコだけどね。」
同じように、紋も慧に笑いかける。
「あ、じゃあ送ってくよ。」
「…じゃあ、お願いしよっかな。バイバイ朱。」
「ん、またな。」
立ち上がる紋に、笑いかける。
「んじゃあちょっと行ってくるな。」
「ん、行ってらっしゃい。」
ひらひらと手を振る慧に、同じように手を振る。
パタン、とドアが閉まって2人が出ていった。
一気に静けさに包まれた空間が、少し寂しくも思えた。
「−ねぇ、慧は朱が銃ダメな理由知ってる?」
「や、知らねーよ。そーゆう話しないし。」
「ふーん、そっか。」
さほど興味なさそうに、紋が呟く。
「ありがとね、送ってくれて。」
「はいはい。」
「で、何の用?」
「何が?」
笑顔の紋に、同じように慧が笑って返す。
「何かあるからわざわざ送ってくれたんでしょ?でなきゃ慧がココに近づくわけないし。」
何もかも見透かしているような目で、紋が笑う。
「…別に俺はいいんだけど、あっちが避けてるからなぁ。」
「…凛だってホントはちゃんとわかってるよ。」
「…そうだな。あ、紋。本題。」
慧の言葉に、ハイハイ?と紋が笑う。
「−あんま、朱のコト詮索すんな。」
まっすぐに吐かれた言葉に、紋がふっ、と笑う。
「−…わかってるよ。慧こそ、あんまり過保護になっちゃダメだよ?」
少しイジワルそうに笑う紋に、慧も同じように笑う。
「わかってるよ。じゃーな、紋。」
「バイバイ。」
言って、紋が手を振る。
それに笑いかけて、慧が背を向けた。
「−…だってさ、凛。」
クスクスと笑いながら、紋が呟く。
「−…うっせーよ、紋。」
不機嫌そうに、凛がタバコの煙を吐いた。
朱は銃が嫌いです。まぁ好きな人もそうそういないだろうが(笑) 理由はそのうち出せたらいいなぁと…(希望系 最後にさりげなーく出てきたのは、No.3の凛です。 彼は別に見張ってたわけではないのですよ。 部屋に戻ろうと思ったら、紋と慧がいて戻れなくて、仕方なく慧が帰るのを待っていただけなのです(笑) 慧と凛の関係は?ってあたりは次で明らかになるかと。 …明らかにしたいなぁ…(いつも希望ばかり |