背徳の、色

 
飛び散るガラス
流れる紅
 
不安定な、君の笑顔
 
 
 
 
「―…こんにちわ、哉ちゃん。」
 
言って、複雑そうな顔をする哉ちゃんに軽く微笑む。
 
 
「…篠、何か用?」
「そーんな、イヤそうな顔しないでよねー。」
クスクスと笑うと、哉ちゃんが軽くため息をつく。
 
「だって、距離置いてきたの、そっちでしょ?」
「そうだっけ?」
「…アンタのそーゆうとこ、嫌いだわ。」
小さく吐き捨てて、哉ちゃんが俯く。
 
 
「…まぁ、いいや。紅茶、持ってきたんだよね。入れてよ?」
持っていた小さな袋を軽く上げて笑う。
 
「…今、部屋すごいちらかってんだよね。だからムリ。」
言いながら、哉ちゃんがドアを閉めようとする。
閉められる前に、それを制する。

 
「まぁまぁ、気にしない気にしない。」
「ちょ―」
止められるよりも先に、ドアに手をかけて。
ゆるい抵抗を受けて、ドアが開いた。

 
薄暗い部屋と、俯く哉ちゃんが目に入った。
 
床に飛び散った鋭いガラスのカケラ。
その周りに模様をつくる赤い色。

 
少し乱暴に、哉ちゃんの腕を引っ張る。
小さく、哉ちゃんが声を上げた。

 
ポタ、とまだ乾かない赤が床に落ちた。


 
 
「―…痛いよ。」

 
泣き出しそうな小さな声に、何もこたえなかった。
ただ、てのひらの鮮やかな赤を見下ろしていた。


 
 
 
 
 
 
「―はい。熱いから、気をつけてね。」
 
言って、湯気の上がるカップを差し出す。
少し躊躇ってから、哉ちゃんが黙ってそれを受け取った。

 
傷の手当てをするときも、ガラスを片付けるときも、哉ちゃんは何も喋らなかった。
ただ、黙って俯いていた。
 
 
 
「―…いい香り。」
 
唐突な、小さな呟きに、顔を上げる。

 
「…気に入ってくれた?」
小さく頷く哉ちゃんに、よかった、と笑う。
 
 
「哉ちゃんのために、つくったんだよ。」
 
笑いかけると、哉ちゃんが少し困ったように笑って俯いた。
 

 
「…困ったな。」
 
持っていたカップをテーブルに置いて、軽く頭に手を当てる。
視界の端に、不思議そうな哉ちゃんの顔が見えた。


 
 
「―…困らせたいわけじゃ、ないんだ…。」

 
呟きながら、目を閉じる。
 
何かしたいのに、空回って。
結局、傷つけている。
 
自分が何をしたいのか、わからなくなってきた。
 

 
 
不意に、頬に何かが触れた。
 
驚いて目を開けると、いつの間にか目の前には哉ちゃんがいて。
 
自分が泣きそうな顔をしてるくせに。
震える手が、「泣かないで」って、言ってるみたいだった。
 

 
 
 
―――好きなんだ。」
 

 
 
小さく、落とすように呟いた。

 
恐くて、ずっと言えなかった言葉。
ずっとずっと、言いたかった言葉。


 
 
泣き出しそうな哉ちゃんが、笑ってくれたから。
何もかも、どうでもよくなって。
 
ただ抱き寄せて、キスをした。
 


 
 
決まりとか、ルールとかプライドとか。
もう、そんなのどうだってよかった。
 
 
それが結局、お互いの首を絞めるようなことになっても。
 
それでも、求めた。
それでも、手に入れたかった。
 
 
 
もう、何もかもどうだってよかったんだ。
 
 
 
 


「ひだまり」の続きっぽいやつですたー。
お題の小説でやった「警告」とも繋がってると思ってください。まぁ、あれ読んでなくても大丈夫…な、はず(あれ
付き合うとかゆう話が全く出てなかったのにキスとかしちゃって気まずくなってたヒトたちです、ハイ。
グラス割った話はここにちらりと出てまぁす(笑)

哉が篠とのこととか色々考えて不安定になっちゃったわけですよ。
篠は零に背中押されて今に至る、ってな感じで。
2人のホントの付き合い始めはこっちでー(笑)

付き合うとかなると色々問題あるわけですよ。それなりの覚悟とかが必要なわけ。
そこらへんを無視したヤツらが溢れてるのは気のせいですって(笑)
彼ら彼女らはちゃんと考えてますって。一応ね(笑)

さぁて、過去話は一段落かなー?(ホントかよ

(2005/10/16)