DOLL

 

 

感情なんていらない
ただ命令の通りに動く人形であればいい

 

 

    −コンコン
 

「−早かったな…ってなんでおまえがいるんだ?」
あからさまに嫌そうな顔をする相手に、にぃ、と笑いかける。

「やっほー凛。ヒマだから遊びにきちゃったー。てか誰かくるんだった?」
「桜が、今仕事行ってっから。」
「そっかー…じゃあ俺帰るわ。またな。」
「あ、慧。」
帰ろうとしたトコロを呼び止められ、振り返る。

「桜帰って来るまでならいてもいーぜ?」
どうせ暇なんだろ?と笑って吐かれる言葉に、同じように笑った。


 

「−今日、朱は仕事か?」
「ううん。ホラ、今日って13日じゃん。」
「あぁ…毎月恒例か…。」
カレンダーを見ながら凛が言う。

「アイツいっつも何処行ってんだ?」
「さぁ?」
「…おまえが知らなきゃ誰も知らねぇだろうな。」
「や、紋は知ってんだろうな。でなきゃ休みにしてくれないだろうし。」
言いながら、ケラケラと笑う。
 

「あぁそっか。…気にならねぇのか?」
「ん〜…まぁ、正直気になるけど、ムリして聞く訳にもいかないじゃん。」
「まぁ、誰にでも辛い過去はあるだろうしな。」
「…ってコトは凛にもあるんだ?」
ちょっと興味あるなーそれって。
言って、クスクスと笑う。
 

「−おまえにもあんだろ?」
「…まぁね…。」
「ま、みんなそれぞれ訳ありだろうしな。」
「凛は、みんなの知ってんの?」
「いや、俺が知ってんのは桜…と玄くらいか。」
「桜かー。それは納得ーって、え、玄も?凛って玄とそんな仲良かったっけ?」
けっこう驚きながら聞く。
確か玄は凛以上に愛想悪かった気がすんのに。
 

「アイツの場合は、おまえと朱以外はみんな知ってるぜ。」
「…それって零って人と関係アリ?」
「そーゆうコト。」
「ふーん…。まぁいいや。でもさ、桜のコトは凛しかわかんないよなー。」
「そうかー?」
「そうだよ。桜って凛としか話しないぜ?」
言うと、それはそうかもな、と凛が呟く。
 

「つーか、なんとなく同い年で固まるもんだろ。」
「え、そうかな?」
「そうだよ。挙げてってみ。」
「えーっと…。」
指を折りながら数を数える。
 

「俺と朱だろー、凛と桜、白と哉、黄と凪に、尚、玄、篠の3人…あ、ホントだ。」
「紋と昂は基本的に付き合い広いしな。」
「不思議だー…無意識ってこえーなぁ…。」
「確かにな。」
凛はタバコを取り出し火を点ける。
 

「あ、凛ストップ。」
「は?」
「俺、禁煙中だから吸わないで。」
「別に俺は関係ねーだろ。」
「だって目の前で吸われてたら俺も吸いたくなっちゃうじゃん。」
言いながら、凛のくわえていたタバコを取り上げる。
 

「…なんで禁煙してんだ?」
「ん、朱がダメだから。」
「…おまえの世界はアイツ中心か…。」
「そんなコトねーよ。なんか怯えてる感じだったからさ。嫌なコトとか思い出させたくないじゃん。」
呆れたように言う凛に、笑いながら言う。
 

「…相変わらず甘いコト…。」
「そか?」
「…1本吸ってけば?」
そう言って凛は箱を差し出す。
 

「え、ちょっと待って凛。俺の話聞いてた?」
「聞いてたよ。だから言ってんじゃねぇか。」
「…?」
相当意味がわからなくて混乱する。
 


「…アイツは、自分が慧にムリさせてる、って思ってるぜ。」
「−っ」
「前にそう言ってた。だから、アイツの前で吸わなきゃ問題ねーんだから隠れて吸っとけ。」
「…ってコトは最初から全部わかってたってコト…?」
「まぁな。おまえが本気なのか試させてもらっただけ。」
「…タチ悪ィ…。」
「おまえに言われるのは心外だな。…ほれ。」
軽く笑いながら、凛がタバコを差し出す。
 

「えー俺キャメル嫌い。」
「おまえなぁ…。」
「ピースかアークロイヤルねーの?」
「あぁ、アークならあるぜ。」
棚の上からアークを持ってくる。


「どーも。」
1本取り出し火を点けて一息つく。

「あ〜半年ぶりだー…。」
「半年も禁煙してたのか…すげぇな…。」
「まーな。」
「…やっぱアークの香りいいよな。」
「なー。俺コレ好き。」
部屋に充満していくほのかに甘い香り。

−カチャ

ドアの開く音がして、入り口の方を見る。
まっすぐな黒髪が、視界に入った。




「−桜。お疲れ。」
「…。」
「…あ、ごめん俺帰るな。バイバイ凛。」
「あ、慧。コレやるわ。」
急いで立ち上がった慧を呼び止めて、タバコの箱を渡す。

「吸いかけで悪ィけど。」
「あ、アリガト。じゃあまたな。…桜も、バイバイ。」
笑いながら、慧が桜に手を振る。


パタンとドアが閉まって慧が出ていった。



「…桜、上がんねぇのか?」
そう言われて、桜は靴を脱ぐ。


「おまえ相変わらず愛想ねぇなぁ。」
「……。」
「慧は別に仲いいわけじゃねーよ。ただ普通に話できるよーになっただけ。」
何も言わない桜に対して言う。


「仕事どうだった?なんかヘマしなかったか?」
「…。」
桜は答える代わりにコクンと頷く。


「そっか。…おまえ、顔色悪いぞ?」
「……だい…じょう、ぶ……。」
「じゃねーだろ。寝てろ。」
半ば強制的に桜をベッドに連れていく。


「俺ココにいるから。」
ベッドの横に座り、タバコをくわえながら言う。


「…。」

しかし桜は寝ようとはしない。



「…桜?」
子供に言い聞かせるように軽く髪をなでる。


「…。」
「ほら、おやすみ。」
桜は目を閉じて、すぐに眠りについた。


顔に飛んだ返り血を、優しく、目を覚まさないように擦る。
その寝顔はまだ幼さを残している少年の顔。



桜は本当に無愛想で笑わない、喋らない。
まぁこれでも会った時よりはまともに話すようになったのだけれど。



過去の出来事で、桜はすべての感情を失くした。
だから人を殺す時も罪悪感のカケラも無く、ただ命令のままに遂行する。
そう、まるで作られた人形のように。

 

そうなってしまったのは、誰のせいか。
考えたってどうしようもないことを、思った。

 


えっと、『大切なヒト』の裏話です。
いつも慧が上手なので今日はちょっと凛に一本取らせてみました☆(笑)

最初は慧と凛しかいなかったんですけど、ちょっと話が続かなくなって桜が登場(笑)
そして、書き終わってから桜が主人公になっちゃってるコトに気づく(遅)

書いてて思ったコトは、なんか凛も桜に十分甘いよ…ってコトでした★(笑)
や、あたしがそうさせてるんですけどね☆(爆)
とりあえず13人の名前をだせたので(ムリヤリ)自分的には満足です♪

ちなみに、桜は凛と同じ部屋です。
とゆうか、桜はちゃんと自分の部屋あるんだけど使わずに凛の方に来ちゃってるだけ(笑)