深呼吸のひつよう
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「―…寒。」
マフラーに顔を埋めるようにしながら、小さく呟いた。
吐き出した息は白く染まり、手がかじかむ。
これだから冬は嫌いだと、ぼんやり思った。
寒さでおぼつかない手つきで、部屋の鍵を開ける。
外よりは幾分暖かい、けれど冷えた空気が頬を撫でる。
「(―慧、まだ帰ってないのか…)」
買物袋を床に置いて、壁のスイッチを探る。
明るくなった世界で、予想外のものを目にした。
「―っ慧、何してんだよ!?」
言いながら、急いで駆け寄る。
「―…あー…朱ー?」
「暖房ぐらいつけろ、バカ。」
触れた手の、予想以上の冷たさに思わず眉をひそめる。
「あー……俺そのまんま寝てたっけ。」
「凍死すんぞ。」
「あはは〜、さすがにそれはないっしょ。」
人の心配をよそに、慧がへらへらと笑う。
不意に視界に入った黒い塊に、ドキッとした。
いつも慧の傍にあって、見慣れてはいるのに。
いつもとは違う、漠然とした不安を感じた。
「―…慧、何かあったん…?」
「ん〜なんでー?」
「なんか…いつもと違う、から…。」
「どこがー?」
「…わか、んないけど…。」
小さく呟きながら軽く俯くと、慧がクスクスと笑った。
「面白いなぁー、朱は。」
ムカつくって言いたかったけど、言えなかった。
ただ漠然と、何かが恐かった。
「―…ねぇ、朱…抱いてよ。」
「はぁ?!」
「いいじゃん、ギュッてしてよ。」
「…何、言っちゃってんの?」
狼狽えてる俺に、慧が可笑しそうに笑う。
「あーあ、なんかもう…何だろうなぁ…。」
自問自答なのか、慧が自嘲気味に呟く。
不意に、左胸に何かが当たって。
真っ黒な塊と、その向こうのキレイな笑顔が見えた。
「―…ねぇ朱、一緒に死んでよ。」
笑ったまま、慧が言葉を吐く。
キレイなキレイな、深い紫色の瞳で。
慧が何を考えているのか、全くわからなかった。
ただ、本気なんだとゆうことしか、わからなかった。
「―……いいよ。」
静寂の中、静かに呟いた。
「…慧がそうしたいなら、それでいいよ。」
呟いて、軽く笑う。
本当は、恐かったけど。
だけど本当に、慧になら殺されてもいいと、思ったんだ。
何の反応も示さずに、慧はしばらく黙っていた。
口を開くでもなく、引き金を引くでもなく。
ただ俯いて、黙っていた。
「―……ごめん。」
小さな呟きと同時に、腕の力が抜かれた。
ゴト、と音を立てて、慧の手の中のモノが床に落ちた。
不意に、気付いたら慧の腕の中にいて。
痛いくらい、きつく力が込められる。
「―――ごめん」
耳元で小さく呟いて、慧が立ち上がった。
そのまま黙って、慧が部屋から出て行く。
俺は、ただその背中を見送るしかできなかった。
きっと、戻ってきたら慧はムカつくくらい普通なんだと思うから。
だから、俺も普通にしてなきゃいけない。
ゆっくりと、大きく息を吸って、吐いた。
冷たい空気が肺に流れ込んできて。
いっそ、その冷たさに殺されてしまえばいいのにと、思った。
久々の朱でーす。…ごめんね主人公!(笑)
実は年末ラスト作です。サクサク書いたはいいけどなかなか打てず、順番が逆転いたしましたぁ。
やっぱ実家って創作力が湧くのかしら??(何のこっちゃ
慧がちょっと壊れ気味なのです。…え、いつもだって?(笑)
まぁ何かあったんでしょ(他人事)
ちなみに朱は銃自体は別に大丈夫です。好きではないけども。
自分では絶対に撃てないし、撃つトコなんて絶対見れないだけで。
タバコも一緒で、火点いてないの見るだけだったら何ともないのです。
とりあえず久しぶりに主人公書けて自己満でした(笑)
(2006/1/4) |