「―初めまして、朱。俺はNo.12の慧。よろしくな。」
「よろしく…。」
紋に言われて地下の練習場に行ったら、同い年くらいのやつがいた。
 
キレイに染められた茶髪と、笑顔が印象的な男だった。
 
 

「早速だけど、時間ないから始めるな。ナイフ使ったコトは?」
「…バタフライ、少しだけ…。」
「じゃあコレ。」
受け取ったのは、ちょっと高そうなバタフライナイフ。

「微調整は…後で紹介されるだろうけど、『尚』ってヤツに頼めばやってくれっから。」
「ふーん…。」
カシャン、と手の中でナイフを遊ばせる。
 

「全員集まるまで時間かかるから、それまで基本的なコト教えるな。」

そしてやらされた人殺しの訓練。
初歩的なコトからちょっと難しいコトまで延々と3時間。

 
 

「―うん。おまえ筋いいなー。これならー…3ヶ月くらいで仕事入れるぜ。」
普通は4、5ヶ月は訓練しないといけないらしい。

「…そりゃどーも…。」
ほめられてんだか、そうでもないんだか。
 

「あのさ、1つ聞いていいか?」
「何…?」
「髪、すごいキレイに染めてんのな。何色っていうの?」
赤い髪を指差して、男が笑いながら問う。
 
 
「…地毛だよ。生まれつきこーゆう色なんだ。」
ゆっくりと、小さく呟く。
 
「地毛ー?へぇ、すげぇなー。真っ赤じゃん。え、じゃあ目は?カラコンじゃねーの?」
「どっちも自前。血の色みてーだろ。」
言って、軽く自嘲する。
 
 
 
「…おまえも、化け物って思うか?」
「ん?んなこと思わねーよ。」

「−ウソつくな!!」

―ガシャン

 

「―どうせおまえも他のヤツらと一緒なんだろ?!」

 

叫ぶようにして言って、目の前の男から目を逸らす。

その瞳が、なぜかとても傷ついたように見えたから。

 

 


「−…違うよ。」

唐突に呟かれた声に、顔を上げる。


「何がだよ…。」
「俺の目、見ろよ。」
そう言われて覗き込む。

 

「不思議な色してんだろ…?カラコンじゃねーよ。」

その瞳は、とても不思議な色をしていた。
薄く、紫がかった色。

透き通った、キレイな色。

 

「俺もガキの頃化け物って言われてたよ。だからおまえの気持ちけっこうわかるつもりだぜ?」
「…ごめん。何も知らないで、怒鳴ったりして…。」
「別に気にしてねーよ。…てか朱、手ェ大丈夫か…?」
「あ…けっこう痛いかも…。」
さっき割った鏡の破片で切ったのだろう。
手からは赤い血が流れていた。


「痛そうだなー…。ちょっと手当てするから来て。」
「あー…いいよ別に。その内止まるだろうし…。」
「いーから来いって。」
言って、半ば強制的に医務室に連れて行かれる。


 

「―っもうちょっと優しくやれよ…」
「動くなって。」
「しょーがねーだろ痛いんだから…。」
「てか自分でやったんじゃん…。」
「…。」
そう言われると反論できなくて、黙る。

「よし、できた。」
「…どーも。」
「どういたしまして。治るまでムチャすんなよ?」
「利き手じゃないから平気。」
言いながら、包帯の巻かれた手を見る。
真っ白な包帯が、とても器用に巻かれていた。

 

「そっか。あ、朱。おまえ髪伸ばせよ。」
「は?何だよ急に。」
唐突な言葉に、眉をひそめる。

「だってせっかくいい色してんのにさ、もったいないじゃん。」
「…やだよ目立つし…。」
「なんでー?…ココのヤツら変わってるから大丈夫だよ。みんなカッコイイとか言うぜ。」
「…アンタも含めて?」
「…俺より変なヤツらばっか…。」
「うわぁすげー組織…。」
そう言って二人で大笑いした。

こんなに笑ったのは久しぶりだった。


昨日まで笑っていたのに。
それが、とても遠い過去のことのように思えた。


 

「―慧。」
「ん?」

アリガト
 

「え、何?聞こえなかった。」
「何でもねー。」
ちょっと素直になれなくて顔を背ける。

けれどそれはココロからの、精一杯の言葉。

 

 

―キ。…きろ、ア―


 

「−朱!」
 
「え?」
目が覚めたらそこは見慣れた部屋の中。
 

「やーっと起きたか。なかなか起きなかったからどうしようかと思った。」
「あー…夢見てた…。」
「夢?何の?」
「…慧と初めて会った時の。」
「うわぁ…すごい懐かしい夢見てんなぁ。」
「ホント懐かしい…。」
あの頃よりは、随分と髪も伸びた。
 

「朱はホントに髪伸ばしてくれてるしな。」
「―これは、別に慧に言われたからってわけじゃなくて…。」
「ハイハイ。…でもホントいいと思うぜ、その色。」
言って、慧がクスクスと笑う。
 
 

「…俺も、その色好きだよ…。」
「え…。」
なんか恥ずかしくなってまた布団に潜りこむ。

「―アリガトな。」

ちらっと見たら、慧は少し照れくさそうに、けれどとても嬉しそうに笑っていた。

 

なんて言うか…中途半端でごめんなさい(汗)
「始まりの日」で書いた回想の後ですね。
でもってこの後の回想もそのうちでてきます(笑)

朱がすぐに慧の目の色に気づかなかったのは、朱が人の目をあまり見ない子だからです。
慧はまっすぐ見てくるようなタイプ。
ごめんなさい、どうでもよかったですね(笑)