蝶が死にゆく場所
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―――死なせてよ―――
呟いたら、何の言葉も返ってこなくて。 物音一つせずに、沈黙だけが突き刺さった。 「― もうイヤだ。死なせて。殺して。もうやだ。」 できるだけ小さく丸まって。 自分の腕で自分をキツく抱いて。 このまま消えて失くなればいいと、うすく願った。 「―――― 慧。」 優しくも冷たくもない、静かな声。 どうせなら怒ってくれたら楽なのに。 バカじゃないのって、軽くあしらってくれたら楽なのに。 「― 死にたいの?」 ありきたりなセリフに、何も答えられなかった。 何を答えたって、何も変わらないから。 「―― 葵・・・・・俺は、どうしたらいい?」 「慧は、どうしたいの?」 優しい微笑みと共に吐かれた言葉。 ずるい。ずるい、ずるい。 そんなこと言われたって、何も答えられるはずがない。 だって、俺に決定権なんて一つもない。 何もない。何にもない。 だけどきっと、ずるいのは俺の方だ。 死にたいと願っても、一人じゃ何もできなくて。 葵に願うしかなくて。 俺の自由はどこにもなくて。 どうしてまだ、生かされているのかがわからない。 「―― 理由が欲しいなら、いくらでもあげる。」 静かに吐かれた言葉。 ゆっくりと顔を上げると、そこには優しい笑みがあった。 「― ねぇ、慧。だから死なないで。僕は、慧を殺したくない。」 まっすぐに見据えられた瞳から目が逸らせなくて。 何も言えなくて、少しだけ目を伏せた。 「言ってる意味、わかる?」 「…。」 優しい問いかけに小さく頷くと、小さく頭を撫でられた。 「―― 死ぬときは、一緒に死んであげる。だから、勝手に死なないで。」 なんて自分勝手なんだろうと心から思うのに。 どうしてかその言葉に酷く安心する自分がいて。 まだ必要なのかとか。 なんで俺みたいのが必要なんだろうとか。 思ったけど、全部飲み込んだ。 まだ生かされているということは、まだ生きなければいけないというコトで。 だって、俺には何の選択肢も用意されてはいない。 葵が殺してくれるまで、俺は生きていなければいけないのだ。 生きて、殺していかなければならないのだ。 なんて、残酷な世界なんだろう。 慧と葵。まだ慧がBUGにいた頃な感じ。
弱い慧を書くのは実はとても楽しかったり(笑) しかし久しぶりに書いたらよくわかりません。小説って、何?(爆) 葵は王様です(ぇ (2007/8/26) |