コ ントラ スト
「―ハイ、コーヒーでよかった?」
「ん、サンキュー。」
「クッキーもあるからどうぞー。」
言いながら、丸い缶に詰められたクッキーを差し出す。
「でも珍しいよね、慧くんが僕のトコに来るって。」
「ん〜…実はそうかもなー。」
言って、慧くんが笑う。
「−…あのさぁ…まどろっこしいの嫌いだから、単刀直入に言ってもいい?」
「うん、何?」
えっとさぁ…、と、慧くんが言いにくそうに口ごもる。
「−…白、さぁ…リスカ、してるって…マジ…?」
少し言いにくそうな慧くんの言葉に、返答に詰まる。
「−…ホント、だよ…。」
小さく呟くと、慧くんが何も言わずに少し俯く。
「…朱に、聞いた…?」
小さく頷く慧くんを見て、そっか、と呟く。
慧くんが何も言わないから、僕も黙っていた。
「−…傷、とか、残ってんの?」
「あ、うん…。」
「…見せて、もらってもいい?」
「いい、けど…別に面白いモノでもないよ?」
小さく困ったように笑って、ゆっくりと袖をまくる。
白い肌に浮かぶ、白い、淡い傷痕。
それを彩る、何本もの赤い線。
「…けっこう、いつもやってんの…?」
真新しい傷を見て、慧くんが聞いてくる。
「…毎日、ではないよ。時々…。」
慧くんが、傷口に小さく触れる。
まるで、壊れやすいモノを扱うかのように、とても、優しく。
人の暖かさ
というものを感じた気がした。 「―・・・ねぇ・・・朱、に・・・何かあった?」 「・・・なん、で?」
ゆっくりと顔を上げて、慧クンが聞き返してくる。
「・・・いつもと、なんとなく違うから。」
雰囲気が、と言って続ける。
「―慧くんがそんなにわかりやすいのって、朱絡みの時くらいでしょ?」
言って、小さく微笑む。
それに対して慧くんは、少し苦笑いを浮かべた。
「それさぁ、こないだ篠にも言われたんだよね。そんなわかりやすい、俺?」
「うん。」
マジー?と言いながら、慧くんがクスクスと笑う。
つられて、僕も同じように笑った。
「―・・・朱がさ、白の気持ち、知りたかったんだって。」
「僕、の…?」
「うん。白が、なんでこんなコトやってんのかな、って。…それで、自分も切っちゃって。」
「―っウソ・・・。」
「あ、全然大したコトねーよ。」
少し慌てた様子で、慧くんが手を振る。
「ホントに表面ちょこーっと切れたくらい。次の日にはもう消える、ってくらいの。」
「・・・そう、なの・・・?」
「そ。だから、全然、大丈夫だから。」
「よかった・・・。」
言って、小さく安堵の息を吐く。
「だからさ、白が気に病む必要とか、全っ然ないから。それだけ、言いたくて。」
「あ、それわざわざ言いに来てくれたの?」
「そうそう。朱が気にして、白も気にしてたら俺もー大変。」
言って、慧くんが笑う。
「ありがとね。優しいよね、慧くんって。」
そーかぁ?と笑う慧くんに、クスクスと笑いかける。
「―・・・あ、一つだけ、聞いていい?」
「ん、何?」
「これ。」
言って、トン、と傷を指差す。
「―――死にたいの?」
唐突な言葉に驚きながら、小さく首を振る。
「――・・・じゃあ、生きたい?」
予想もしなかった問いに、思わず言葉に詰まる。
まっすぐな瞳から目を逸らして俯いた。
声にならない言葉を、探しながら。
「―――ごめん、ちょっとイジワルなコト聞いたな。」
言って、慧くんがすまなそうな顔で笑う。
それに対して、何も言わずに笑うコトしかできなかった。
「んーじゃ、俺帰るわ。」
ごちそーさま、と言って、慧くんが立ち上がる。
「ごめんな、いきなりおしかけて。」
「ううん、全然。また来てね。今度はもっとゆっくりしていってよ。」
「おぅ。朱と一緒に来るよ。」
ニッコリと笑って慧くんが言う。
「―・・・白、あんまりやんなよ?せーっかくのキレイなお肌に傷が残ったらたーいへん。」
少しふざけて慧くんが笑いながら言う。
それに対して、クスクスと笑う。
「じゃあなー。おじゃましましたー。」
笑いながら言う慧くんに、バイバイ、と言って手を振る。
パタン、と閉まったドアを見て、ゆっくりと手を下ろす。
「―・・・・・・どうしたいんだろー・・・。」
幾筋もの赤い線を見下ろして、小さく呟いた。
どうでもいいけどこの組み合わせ初めて。
でもってリスカ話これでとりあえず一段落。とりあえずはね(笑)
きっと慧は朱以外にも優しいだろう、と思いつつ。きっとね(笑)
え、結局は朱絡みだからですか?(笑)
(2004/9/24) |