冷  え た  指 
 
 

「―――神楽。」



不意に聞こえた声に、顔を上げる。

目の前に見えたのは、短いスカートからのぞいた白い足で。
少し目線を上に移したら、知っている顔がいた。


「宮野、どうしたん?」
「ぼーっとしてたから声かけただけ。」
言いながら、宮野が隣に腰かける。


「珍しいね、斉藤たちといないの。」
「そ?そんな日もありますヨ。」
言いながら、タバコをくわえる。

「ココで吸って平気?」
「平気。いつも吸ってるし。あ、」

声と同時に、ライターが階段を音を立てて落ちていく。

何やってんだか、と呟いて、宮野が階段を降りてライターを拾い上げる。



「―最近の神楽、変だよ。」

言いながら、小さな白い手でライターの火が灯る。
少し近づいて火を点けると、甘い香水のにおいがした。


「変?なんで?」
「なんか、よくわかんないけど。」
「あら、紫亜ちゃんは俺のことそんな気にかけてくれてるんだ?」
おどけて笑うと、小さくため息が聞こえた。


「あたしに気遣ってどうすんのよ。ばっかみたい。」

辛辣な一言を吐いて、宮野が俯いた。
キレイに染められた茶色い長い髪が、顔に影を落とす。

薄く、だけどキレイに化粧のされた整った顔。
キレイだよなぁって、思わず言葉に出していたらしく、宮野が怪訝そうな顔をした。



「彼氏は?元気。」
「さぁ。」
「ホント、淡白だなぁ。」
言って、クスクスと笑う。

「そっちこそ、彼女と続いてんの?」
「あれ、俺今いたっけ?」
「知らないわよ。」
呆れた顔した宮野に軽く笑いかける。

タバコの灰が落ちて、階段の汚れを増やした。


屋上に続く非常階段の一番上。
休み時間ならまだしも、授業中は誰も来ない。




「―――なぁ、宮野ー。」
「何?」
無愛想な表情から出される優しい声。

ゆっくりと、煙を吐いた。


「…大事な人間が2人いてさ。どっちかしか選べないとしたら、どうしたらいいと思う?」
「…何の話?」
「んー、まぁそんな話。」
何か考える宮野の横顔を見ながら、タバコの火を階段に押し付けた。

「どっちが、ホントに大事?」
「んー…、どっちも。」
「じゃあダメだね。」
唐突な言葉に、目を丸くする。
どーゆうこと?って聞いたら、宮野の顔がこっちを向いた。


「どっちか選べないんだったら、どっちも不幸になるよ。あんたもね。」

まっすぐな目と言葉に、ふっと笑った。


「やーっぱそうだよなぁー。どうしようもない、か。」
「どっちか選ぶしかないでしょ。ホントにその人が大事ならね。」

宮野の言葉はいつもまっすぐで。
それに救われたり、堕とされたりする。

それだからきっと、宮野の隣は気が楽で、心地よいのだろう。



宮野、と小さく名前を呼んで。
こっちに向き直った顔に、軽く口付ける。

黙ったままの、だけど拒否もしないその唇に、もう1回キスをして。
何の抵抗もないから、そのまま深く口付けた。

薄く開いた唇を小さく舐めて、さらに深くなっていく。


ときどき漏れる小さな声が、静かな静かな空間に反響する。


白い肌に触れたらとても柔らかくて。
どうして女の子はこんな肌がキレイなのかなとか、どうでもいいことを思った。




「…神楽、ココですんの?」
「イヤ?」
首筋にキスを落として、手を背中にまわす。
冷えた手に、微かな体温が伝わる。

「やだよ、床汚いもん。」
「あらあら、女の子は細かいこと気にするのねー。」
「だって汚れんのあたしじゃん。」
その言葉に、そりゃそうかと笑って、またキスをして。
壁に押し付けて、また深くキスして。




「―――紫亜、このままふけよっか?」


耳元で小さく囁くと、いいよ、って小さな声が返ってきた。


もう1回軽くキスして、立ち上がる。
宮野も、それに続いた。


タバコやらガムやら、汚れが染み付いた階段。

どれだけ洗っても、もう落ちないんだろうなとか。
それは、俺も一緒なのかなとか。

繋いだ細い指の先で、どうでもいいことを思った。






話進まないなぁ、オイ(ぇ
慧の話ばっかりー。他の人書きたーい。

最初そのままいこうかと思ったらー、よくよく考えたらやだなと思ってやめたヨ(笑)
若いなー、高校生(切ない)
ちなみに宮野ちゃんの名前は「しあ」と読みマス。
思いつかなくて思いつかなくて、助けを求めましたとサ☆(笑)
 
 
(2007/12/19)