アスピリン
−…コンコン
「−…はーいはい、どちら、様?」
言いながらドアを開ける。そこにあったのは、少しダルそうな慧の姿。
「…よーす、篠。」
「慧、大丈夫?すごい顔色悪いけど…。」
「んー、頭痛くてさー…。」
「あ、じゃあ薬あげるからー…中入って待ってて?」
笑いながら言って、慧を招き入れる。
おじゃましまーす、と言って、慧がふらつく足取りで中へと入る。
こんなに弱った慧を見るのは、久しぶりかも。
「−ハイ、薬。」
「あ、ありがと。」
「の、前に。」
ニッコリと笑って言うと、慧が不思議そうな顔をする。
「目、瞑ってて。」
言われて、少し躊躇いながらも、慧がゆっくりと目を閉じる。
それを見届けて、ゆっくりと手を伸ばして軽く前髪をよせる。
手の平を額につけると、慧がビクッと震えた。
「篠、手冷た。」
「やっぱり。慧、熱あるよ。」
「え、ウソ。ないないー。」
「ホントー。ちょっとそこ横なってて?」
ね?と微笑むと、慧は何か言いたそうな顔をしながら、大人しくソファーに沈んだ。
「いい子いい子。ちょっと待っててね。」
小さい子をあやすように笑って言って、奥の部屋へと消える。
「−…大丈夫かな…。」
残してきた慧を心配しながら、呟く。
きっとあれは、身体的なものではないのだろう。
前にもこんなことがあった。あれはいつだったけ?
そうだ、あれは確か半年前。
ちょうど、慧がここにやってきた頃だった気がする。
「−…お待たせー。はい、コレ飲んでね。」
言いながら、白い錠剤をいくつか飲ませて、氷水で冷やしたタオルを慧の額にのせる。
「慧、ホントに大丈夫?」
「んー、大丈夫ー…。」
軽く笑いながら、慧が呟く。
「…何か、あったの?」
「何がー?」
僕の問いに、慧がふざけたように笑って言う。
いつもと同じように、だけど全く違う笑顔で。
「−それ、たぶん精神的な問題だよ。」
「はっ、何言ってんの、いきなり。」
言って、慧が笑う。
「−ムリして笑わなくてもいいよ。今、笑えてないから。」
「…。」
目にかかったタオルに腕をのせながら、慧が黙り込む。
「…半年前にも同じコトあったの覚えてる?」
言うと、慧が軽く起き上がる。
「−今回も、誰か知り合い、殺した?」
「…なんで、そう言い切れんの?」
「血の匂い、するし。」
言いながら、落ちたタオルを拾う。
「それに、今まででこうなった慧って、その時しか見たコトないしね。」
「…。」
黙ったまま、慧が少し俯く。
「…普段強い人って、ホントはすごく弱いからね…。」
「…俺は、強くなんかないよ。」
「強いよ、慧は。少なくとも、僕なんかより全然。」
少し微笑んで、小さく呟く。
「−…まだ横になってた方がいいよ?その方が熱早く下がるから。」
笑いかけて言うと、慧が少し考えながらも、また横になる。
「−……なぁ…。」
「ん?」
微かに聞こえた声に、耳を傾ける。
「…篠は…一番初め、殺したの誰だった…?」
小さく、絞り出すようにして、慧が呟く。
「…殺してないよ。」
同じように小さく呟くと、慧が驚きの声を上げる。
「ウソ。それってダメじゃん。」
だよね、と言って、クスクスと笑う。
「…殺してないんだ。みんなみたく、家族とか、友達とか。」
「…。」
「ホラ、僕って殺し専門じゃないからさ。」
言って、軽く笑う。
「−…ただ…初めにここに入ったとき、毒薬作らされたんだ。」
言いながら、少し俯く。
「それで、無関係な人たち、殺しちゃった。たくさん。」
言って、俯いたまま少しだけ微笑む。
「…ごめん…。」
「いいって、気にしないで。それより早く元気になりな?」
新しく、冷えたタオルを額にのせる。
「朱に、心配かけたくないんでしょ?」
言って、ニッコリと笑いかける。
「相変わらずだよね、慧は。」
少し照れ臭そうな慧に、クスクスと笑って言う。
「なんだよー、全部お見通しかよ。」
「だって、慧って朱のコトになるとすごいわかりやすいもん。」
クスクスと笑うと、そうかなー?と言って、慧が首を傾げる。
「ホラ、もう寝な?起きたら熱下がってるから。」
「んー…眠くなってきた…。」
「そりゃあ、さっきのにそーゆう成分入ってますから。」
「さすがー。」
言って、慧が小さく笑う。
「僕向こうの部屋いるからね。何かあったらおいで?」
言って、ふわりと微笑む。
「−…なんかー…。」
「んー?」
「篠って、お兄さん、って感じする。」
「え、何それ?」
言うと、慧が軽く笑う。
「なんとなーく思った。優しい兄ちゃんって感じ。」
そう?と言って軽く笑う。
「−…こーゆう兄貴、欲しかったなぁー…。」
段々と、弱くなっていく声。
「−慧?」
見るともう、慧は規則的な寝息を立てていて。
子どものような、カワイイ寝顔。
こーゆうのを見ると、そういえばまだ17歳なのだと思い出す。
「−…お兄ちゃん、ねぇ…。」
小さく呟いて、リボンを解く。
赤い赤い、リボン。
「−懐かしい呼び方ー。」
ふっ、と小さく微笑んで、小さく呟いた。
「アイリス」の続きっぽく。 慧が参ってマス。ユウちゃんはそれだけ近い人間だったのかね(他人事)
慧がダウンするのはホントに珍しいコトなのです。健康優良児なので(笑)
慧は篠みたいなお兄ちゃんが欲しいらしいよ(笑)
篠は裏表ない優しさ持ってるからね。腹黒くない笑顔だよ(笑)
間違えて毒飲ませても笑って終わりそうなのが恐いけど★(イヤダ)
(2004/9/13) |