パートナー
 
 
 
「−…はーく、朝だよー?」
 
 
「んー……。」
返事とは言えない返事をして布団に潜り込む。
 
 
「…こらー!起っきろー!!」
次の瞬間、布団を引っ張られ少しの肌寒さと、身の軽さを感じた。
 
 
「んー……おはよー哉ちゃん…。」
眠い目をこすって、目の前の人物に向かって呟く。

「起きたー?」
哉ちゃんがカーテンを開けて言う。眩しい光が暖かかった。
 
「うーん、起きたー…。」
少し間延びした返事をしながら頷く。
 
 
「相変わらず朝弱いんだね。」
「んー昨日はビデオ見てたら遅くなっちゃっただけだよ。」
楽しそうに笑う哉ちゃんにちょっと反論する。
 
「何のビデオ?」
「んーとね、殺し屋の話。」
そう言ったら哉ちゃんが吹き出した。
 
 
「面白いもん見てるね、白。」
「うーん、どんなもんかなーって。」
まだ笑う哉ちゃんに床に置いてあったビデオを手渡す。
 
 
「あ〜コレかぁ。昔見たコトあるかも。」
「うん、僕も見たコトあったんだけど、殺し屋の視点から見たらどうかな、って。
サラリと言う。ココではコレが日常会話だから。
 
「あ、なるほど。で、どうだった?」
少し楽しそうに哉ちゃんが聞く。
 
「それがさぁ、何て言うか…つっこみ所満載?」
「あはは〜マジでー?」
「うん。見てて主人公死ぬなーって思ってたし。」
そう言うと哉ちゃんはまた笑う。
 
 
「うわーあたしも見たくなってきた。」
「あ、返すの明日だから今日見る?」
「うん、見る。」
「じゃあ貸すよ。ところで哉ちゃんは僕起こしに来ただけ?何か用事?」
「あ、えっと、模様替えしようと思ったんだけどさ。手伝って欲しいな、って。」
「うん、いーよ。じゃあ顔洗ってくるからちょっと待ってて。」
「ん、わかった。」
哉ちゃんはそう言うと、持っていたビデオに目を落とした。
 
 
 
「−…白、そっち持ってー。」
「はいはーい。」
せーの、って言って2人で本棚を持ち上げる。
 
 
「こんな感じ?」
「うん、ありがとう。」
大体の模様替えを終えて、哉ちゃんがコーヒーを煎れてくれる。
 
「相変わらず部屋さっぱりしてるね。」
「そう?」
「なんかシンプル。」
「うーん…女の子っぽいの好きじゃないんだよね。」
ちょっと考えながら哉ちゃんが答える。
 
「哉ちゃんらしいよ。」
「…それって誉めてる?けなしてる?」
「率直な意見。」
笑って言うと、哉ちゃんも笑った。
 
 
「…って言うか…白、背伸びた?
「え、そんなコトないと思うけど…。」
唐突な哉ちゃんのセリフに少し考える。
 
「んー…ちょっとこっち来て並んで?」
言われるままに、鏡の前で哉ちゃんの隣に立つ。
 
 
「あーホラ、白の方が大きいー。前はあたしと同じくらいだったのにー…。」
「あ、ホントだ…。」
鏡に映る姿を見て言う。
 
「アタシ一番小さくなっちゃったじゃん。」
「いいじゃん女の子なんだから。かわいいよ。」
「うー…白もう大きくなんないでねー?」
「…あの、哉ちゃん。僕、一応男なんだけど…。」
「だって白カワイイんだもん。女の子みたい。」
「うー嬉しくない。
そう言うと、哉ちゃんは楽しそうに笑った。
 
 
「アタシも白みたくカワイクなりたーい。」
「哉ちゃん十分かわいいって。」
「そんなコトないし、ホントに。」
 
「かわいいよ。」
 
笑ってそう言うと、哉ちゃんはちょっと照れたように下を向いた。
 
 
 
「…やっぱ白、男の子だね。」
 
「え?」
小さな呟きが聞き取れなくて聞き返す。
だけど哉ちゃんは何でもない、って笑うだけだった。
 
 
 
「−あ、ねぇ白。あの映画って最後どうなるっけ?」
「最後?主人公死んじゃうよ。」
「え、そうだっけ?」
「うん。前に殺した人のお姉さんに。」
「…そっか。」
そう言って哉ちゃんが少しだけ目を伏せる。
 
 
「…なんかその人が『因果応報』とか言ってた。…ピッタリだよね。」
少し笑って言うと、哉ちゃんが少し俯いた。僕は何も言えなかった。
 
いつ自分がそうなるかもわからないから。
遺族に殺されたって文句は言えない。言えるはずがない。
 
僕が、僕たちがやってるコトはけして許されるコトじゃない。
だけどやるしかない。それが自分の選んだ道だから。
 
 
「…ねぇ、白。…ビデオ一緒に見ない?」
「いいけど…どうして?」
「ん、なんか…ダメ?」
少し困ったような顔で哉ちゃんが言う。
 
 
「ううん、いいよ。一緒に見よ?」
「うん、アリガト。」
そう言って哉ちゃんはやっと笑った。
 
 
「…うん、やっぱ哉ちゃんかわいい。」
「っな、何言ってんの白!?」
「え、率直な意見。」
笑って答えると、哉ちゃんは少し照れながら小さくアリガト、って呟いた。
 
赤くなるのをごまかすためか、哉ちゃんがビデオに視線を移す。
僕はふと自分の手に視線を落とす。
 
 
血の色が染みついてしまいそうなくらい、たくさんの人を殺めてきた手。
 
僕が、僕たちがやってるコトはけして許されるコトじゃない。
だけどやるしかない。それが自分の選んだ道だから。
 
 
「−…白?どうかした?ボーっとして…。」
 
不意に、目の前に心配そうな哉ちゃんの顔があった。
 
 
「なんでもないよ。ビデオ見よっか?」
「うん。」
そう言って哉ちゃんが笑う。
 
 
僕らがしているコトはけして許されるコトじゃない。
だけど、哉ちゃんが笑いかけてくれるコトで、少し楽になれる気がする。
 
少しだけ、罪を許してもらえるような気がする。
 
 
単なる傷の舐め合いかもしれないけど、僕にはそれで十分。
どれだけ絶望しても、自分として生きていけるから。
 
 
哉ちゃんがいなかったら今僕はココにいなくて、この世にすらいなかったかもしれない。
いつも優しく笑ってくれて、それにすごく救われてるなんて哉ちゃんは知らないんだろうな。
 
言葉に出しては言わないけど、きっと哉ちゃんにも伝わってると思う。
僕にとって、哉ちゃんはパートナーであり、同時にとっても大事な人だってコト。
 
 


334hit 湖龍さんのリクで白の小説です♪ 
遅くなってしまってすみません(汗)
白と誰にしようかな〜って考えたんですけど、やっぱり白には哉だなぁと勝手にやってしまいました(笑)
 
誤字脱字あったら教えてやってくださいませ〜(汗々)