微 笑 み
「−…紋さん、僕は単なる飲み会って聞きましたけど…。」
「うん、単なる飲み会ー。」
ニッコリと笑って紋さんが言う。
「…この大規模なパーティーのどこがですかっ!?」
ざわざわとしたロビーで、少し叫ぶように言う。
人が多すぎて、そうしないと聞こえないからだ。
「だって先に言ってたら篠絶対来ないでしょ?」
「来ませんよ。紋さん、確信犯じゃないですか…。」
「あはは〜。あ、受付済ませてくるから待っててね。帰っちゃダメだよ?」
笑って念を押して、紋さんが受付へと歩いていく。
それを見送りながら、ため息を一つついて壁によりかかる。
なんでこうなったかと言うと、かれこれ今から1時間くらい前。
「−飲み会?」
「そ。お偉いさん方からお誘いきててさー。でも1人で行ってもつまんないでしょ?」
「それでなんで僕なんですか?」
「だってー、さすがにそーゆう集まりに未成年は連れていけないでしょ?」
「それはそうですよ。」
笑っていう紋さんに、笑って返す。
「で、昂は出張でいないし、玄はそーゆうの嫌いだし、黄は仕事だし。」
指を一つ一つ折りながら紋さんが言う。
「凪は女の子だから危ないし。で、尚は僕とは飲みたくないでしょ?」
少し困ったように笑いながら紋さんが言う。
「…尚は割り切れる人間ですけど、どうしても割り切れないこともありますからね。」
「そうだねー。まぁ普段は全然普通に話せるけどねー。」
クスクスと笑って紋さんが言う。
「飲み会、いいですよ。僕でよければ。」
「ホントー?ありがとー!じゃあスーツ着替えといてね。ネクタイも忘れずにー。僕も着替えてくるから。」
「え、あ、ちょ、紋さん!?」
言うや否や、そこにはもう人の姿はない。
「…スーツ…?」
…そんなこんなで今に至る、と。
「−お待たせ、篠。行くよ?」
いつものように微笑んで、紋さんが手招きをする。
文句の一つでも言いたくなったが、無駄なので諦めて歩き出す。
「−うわ、これみんな同業者ですか…?」
扉を開けたその先のホールは、多くの人で溢れていた。
「大体はね。まぁただの関係者も多いけど。」
「すごいですね…僕明らかに場違いじゃないですか。」
「何言ってんのー。篠は篠ですごいんだから、気後れなんかしなくていーの。わかった?」
そう言って、紋さんは少し子供っぽく笑う。
いつもの年の割に大人びた笑いじゃなくて。年より少し幼く見えるような笑い方。
「じゃあ面倒だけどお偉いさんにアイサツしてくるねー。一緒に行く?」
「遠慮します。」
ニッコリと笑って答える。
「…じゃあ行ってきます。」
嫌そうにため息をついて、紋さんが雑踏の中へと消えていく。
「(−さて、ヒマだなー…)」
人混みへと目を向けながら、近くのテーブルへ手を伸ばす。
手に取ったグラスを口に近づけて、一瞬考えてから元のテーブルへと戻す。
「−…なぁ、なんで飲まねーの?」
唐突な声に振り返ると、そこに立っていたのは細身のスーツを着こなした若めの男。
その言葉は確かに自分へと向けられている。
「酒嫌い?」
「…嫌いじゃないけど…。」
「じゃあ飲めばいーのに。おいしそうじゃん?」
笑ってそう言って、淡いピンク色のカクテルを差し出す。
「…何か、混ざってるでしょ?」
少し困ったように笑うと、男が少し驚いたような顔をした。
「−…へぇ、アンタ気付いたんだ?すげーじゃん。わかったのアンタだけだぜ?」
軽く笑って、男がそう言う。
「…やったのって、アンタ?」
「そ。何人気付くかなーと思ったんだけどみんな全然ダメだなー。」
クスクスと面白そうに笑って男が言う。
「そう恐い顔すんなって。ただハイになるだけで別に毒じゃねーんだし。どうせ飲み会じゃん。」
「…悪趣味。」
そう言うと、男がくつくつと喉で笑う。
「おまえ、おもしれーなー。どこのどいつ?」
本当に面白そうに笑って、男が言う。
「−…篠。」
雑踏の中、微かな、だけど確かに聞こえた声に振り返る。
「−…紋ー?」
「こんばんわ、レン。久しぶり。」
「"これ"紋の?」
人をこれ呼ばわりして指差しながら、紋さんに聞く。
「僕の仲間ー。手出さないでね?」
「はっ、相変わらず甘ちゃんだこと、マリア様は。」
ニッコリと笑う紋さんに対して、男は小馬鹿にしたように笑う。
「なぁ、コイツって名前持ち?」
「ドクターだよ。」
「あー、なるほどね、コイツが。」
言って、こっちを見て軽く笑う。
「じゃあ僕らもう行くね。篠、行くよ?」
「あ、ハイ。」
呼ばれてぱたぱたと着いて行く。
「−紋。そいつ今度貸せよ。」
「ダメだよ。僕のじゃないから、貸せない。」
笑って歩き出す紋さんの後を着いて行きながら、軽く後ろを振り返る。
男が、楽しそうにくつくつと笑っていた。
「−紋さん、あの人知り合いなんですか?」
「うん。『キラービー』のリーダー。篠と同じ、『ドクター』の通り名持ってる人だよ。」
「え、そうなんですか?」
「そ。まぁレンの場合は『キリングドクター』だけどね。」
そう言って、紋さんはクスクスと笑う。
「レンって言われてちょとびっくりしました。」
「あ、そっか。篠もレンだもんね。でも字は違うよ。レンは火に東って書いて煉。篠は蓮の花でしょ?レン、苦手?」
「あまり好きじゃないですね。」
「やっぱりー?決して悪い人でもないんだけどねー。人殺すのゲームみたく考えてるから。」
言って、クスクスと笑う。
「−…紋さんも、そうなんじゃないんですか?」
それを聞いて、紋さんがほんの一瞬驚いた顔をした後、微笑んだ。
いつもの、子供っぽいような、それでいて大人っぽいような優しい微笑みじゃなくて。
全てを見透かすようなその瞳は、確かに笑っているのに、逃げ出したくなるような衝動に駆られる冷たさ。
−あぁ、きっとこの人は人を殺すとき、こうやって笑うんだろうな。
『微笑のマリア』
その通り名にふさわしい、深い深い慈悲の微笑みで。
「−さて、帰ろっか?」
そう言って笑った顔は、いつも通りの優しい笑み。
「あ、そう言えばさ。プライベートで篠とか呼ばれる?」
「あ、いえ全然。みんな篠宮か蓮ですよ。」
「だよね。それが普通だもんね。」
「だから篠って呼ばれたらすぐ誰かわかりますよ。」
「あ、なるほど〜。」
そう言って、紋さんが楽しそうに笑う。
「ねぇ、もしリーダーがレンみたいな人だったらどうする?」
「…入りませんそんな組織。」
「うわーかわいそー。」
楽しそうにクスクスと笑って、紋さんが言う。
「…って言うかー。」
「んー?」
少し考えて、口を開く。
「僕はー…僕だけじゃなくて、みんなも。…紋さんじゃないとついていかないですよ。」
そう言うと、紋さんは少し驚いたような顔をする。
「…アリガト。」
小さく呟いて、紋さんが笑う。
少しだけ照れているような、本当に、嬉しそうな笑顔で。
1000hit 零菟さんのリクで、紋と篠の小説デス。遅くなってしまいまして…(汗々)
しかも長い上にわけわからん設定ですな…(汗)そして題名になんのひねりもなくてごめんなさい(笑)
通り名と本名を出してみましたー。わかりにくいけど…(汗)
篠の本名が「篠宮 蓮」で、通り名が「ドクター」 紋の通り名が「微笑のマリア」もしくは「微笑みのマリア」です。
紋の本名はまだ秘密でお願いします(笑)
紋と尚の話はまたいつかそのうち…(遠い目)
ちなみに煉は一発屋なのでこの後はもう出ませんよ、たぶん(笑)
こんなのでよろしければもらってやってください〜。
誤字脱字あったらごめんなさい(滝汗) |